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ワイルド・スピード/ジェットブレイクのトルーパーcomのレビュー・感想・評価

3.0

#ワイスピ
人気シリーズの9作目。公開日にユナイテッドシネマとしまえんのIMAXで観賞。
ジャステイン・リン監督がシリーズに復帰した今作では、ロック様&ステイサムが未出演の代わりに筋肉要員としてジョン・シナが登場。


■ストーリー
前作から5年後、引退していたドム(ヴィン・ディーゼル)の元にいつもの仲間が来訪。

世界征服をもくろむサイファー(シャーリーズ・セロン)と新キャラのジェイコブ(ジョン・シナ)の計画を阻止すべく、車で街を破壊したり空飛んだりしながら世界を救ってまたファミリーを増やす...的な話。

ようするにいつもとだいたい一緒です。


■増え続けるファミリー
日本ではいわゆる「セカイ系」のアニメが人気だけれども、ハリウッド映画は「カゾク系」ともいうべき疑似ファミリー映画が現代の主流である。

仲違いしてたり血がつながっていなかったり過去にいろいろあったりしても、共に戦えばみんな家族だよな!的なストーリーは、今思うとワイスピシリーズが切り拓いたような気がしなくもない。

しかし、シリーズを重ねるごとに魁男塾ばりに仲間が倍増していくとキャラクターが増えすぎキャラ被りしてしまう弊害も。

特にワイスピシリーズは坊主頭の主人公の元に次から次へと坊主頭のファミリーが増えまくっていくのでキャラ被りは甚だしく、
主人公の1人ブライアンが事実上退場してしまったことで前作『ICE BREAK』(2017)では主要キャラに4人の屈強な坊主が入り乱れるカオス状態に。

そこで、スピンオフ的な作品『スーパーコンボ』(2019)にてロック様&ステイサムという主役を喰いぎみのスーパースター2人をいったんシリーズから切り離し、
本作が8作目『ICE BREAK』の直接の続編ということになった(ということで原題は『F9』である)。

このへんはキャストの不仲が原因という噂もあるが、キャラ被り問題も大きいと思う。

本作では、改めてシリーズの主人公がドムであることを再確認する一方で、予告編で散々見せ続けられたあの人のシリーズ復帰もあり、結局本作でもまた「ファミリー」の数が増えてしまうのだがそこは元祖「カゾク系」映画たる本シリーズのお約束か。

正直、最強2大スターの一時離脱によってキャラクターのスケール感が萎んだ感は否めないが、
本作ではレティ/ミア/ラムジーといったシリーズ古参女性キャラたちの大活躍が見られるという嬉しい誤算もあったので、その点では悪くない。


■頭打ちのアクション
ワイスピシリーズといえば、作品を重ねるごとにスケールアップしていく、現実離れしたアクションシーンが魅力。
ただ、映画的興奮という点では伝説の金庫チェイスを見せつけた5作目の『MEGA MAX』あたりがピークだったような気がしなくもない。

本作では強力な磁石やジェットエンジンを使った超絶アクションが展開されるけれど、後年になって「ジェットブレイクのあれが好きなんだよな!」的に語られるほどの驚きはなかったかなという印象。

ストーリーとアクションの関係も良くない。
作中「アリエス」なるアイテムをめぐって争奪バトルが繰り広げられるのだけれど、このアイテム自体はいわゆるマクガフィンであって、アクションシーンに関連していないのが良くなかったと思う。

超磁力やジェットエンジンが今回のアクションの目玉なのだから、アリエスというアイテムからそのパワーが発生している設定にした方が「こんなやべーアイテムを悪人に渡すわけにはいかない」という緊張感に繋がったのではないか。

アクションシーンなんて絵が凄ければいいのでは?と思うかもしれないけれど、映像的迫力が物語的危機感とリンクしないと観客の興奮度は半減してしまう。

一応あと2作つくって11作目でシリーズ完結予定らしいけれど、最後に1本くらい金庫チェイスを超える伝説をぶちたてて欲しいものである。



<以下、キャラクター別感想 ※基本ネタバレありです>



■ドミニク・トレット(ヴィン・ディーゼル)
子育てをしながら平和に余生を送っていた主人公の元にいつもの仲間達が訪れる...ていう『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)のような展開。

本シリーズは、現実世界とほぼ同様に劇中の年月が経過するので、舞台設定は前作の5年後。
シリーズ一作目公開時34歳だったヴィン・ディーゼルももう54歳。引退してもいい頃合いだ。

そんな主人公の加齢を活かし、映画はドムの父と弟に関わる回想シーンから始まる。
個人的にこの回想シーンの絵が今作でいちばん好きだった。

『フォードvsフェラーリ』(2020)でも見たようなリアルで迫力のサーキット映像は、シリーズから失われていた自動車本来の絵の魅力をスクリーンに蘇らせてくれた。
息子とレース場に行くシーンも『フォードvsフェラーリ』と重なる。

若き日のドムを演じた俳優(ヴィニー・ベネット)も好演で、ドムと同一人物と言われても特に違和感がない。

9作目にして「弟がいました」なんて聞いてねえぞ、ってのはツッコんだら負けなので気にしないことにする。

兄弟をメインにした脚本はロック様&ステイサムに喰われかけていた最近のドムに焦点を戻すという意味ではよい演出だった。
反面、最終的に父親の借金の真相が明かされる話は若干グダグダ感があったような。


■ジェイコブ・トレット(ジョン・シナ)
ピースメイカーことジョン・シナが悪役として登場。
とはいえ、弟って時点でどうせ家族になるんでしょ感をおぼえてしまい、結果として激しいアクションにあまりスリルを感じない逆効果が発生していた気がする。
彼が弟のジェイコブであることはもっと終盤に明かすべきだったのでは。

スーパーコンボの2大ハゲと比較してしまうとどうしても厳しい評価になってしまうけれど、アクションは割と頑張っていたと思う。


■ミア(ジョーダナ・ブリュースター)&レティ(ミシェル・ロドリゲス)
本作で予想外に良かったのが、シリーズおなじみの両女性キャラの活躍。

個人的にミアの女優さんのルックスがめちゃくちゃ好きなので割と興奮した。
さすがに老けたなあというところもあるけれど、彼女がちょっと悪そうな目つきで車を運転しながら駆けつけるシーンは拍手したくなる。

レティも安定のアクションシーンでカッコよかった。

この2人で日本に行ってラーメン食べるシーンがなんか印象的。
ミアぜんぜん手をつけようとしないので、すげえまずそうに見えて笑った。


■ラムジー(ナタリー・エマニュアル)
我らがミッサンディちゃんが想定外の大活躍。とにかく終始かわいいすぎる。
愛嬌ある女性キャラが大型車を必死に暴走させる絵は『シャンチー』と本作で今年2回観た。

エジンバラは街並みが綺麗でアクションシーン映えする。『アベンジャーズ/インフィニティウォー』(2018)でワンダとヴィジョンが襲われるシーンと同じ場所もあったかも?


■ハン(サン・カン)
コロナ禍での相次ぐ延期もあり、彼の登場を予告編でさんざん見せられてきたのでサプライズ感ゼロだった。
いや、あの状態で生きてましたはありえないだろというツッコミもなんかもうどうでもいい感じ。

本シリーズでは死がとても軽いので、次はぜひジゼル(ガル・ガドット)も復活させていただきたい。


■エル(アンナ・サワイ)
ハンが助けた少女が新キャラとして新たにファミリーに加入。アクションはけっこう頑張ってた。

アジア系かつ女性ということでキャラ被りはないけれど、ハン&彼女の話とドム兄弟の話、どっちかだけで良かった気がする。
別に2つの話が最終的に重なるわけでもないし、映画2本ぶんの人間関係を組み込んだことで上映時間が無駄に長くなっただけのような。

■ローマン(タイリース・ギブソン)&テズ(クリス・ブリッジス)
ワイスピついに宇宙へ。宇宙へ行く必然性がないし、絵的にもけっこうひどかった。
『ミニオンズ』(2015)意識してコメディ的にしたんだろうけれど、宇宙なめるなよ『ゼロ・グラビティ』(2013)でも観て反省しろって感じ。

■ショーン(ルーカス・ブラック)&トゥインキー(バウ・ワウ)
『TOKYO DRIFT』の主人公2人がまさかの登場。シリーズファンには嬉しいところ。
ロケットでローマンたちを宇宙へ飛ばすシーンのロケ地は、スターウォーズEP7&EP8に登場したレジスタンス基地と同じ場所だった。イギリスのグリーナムコモン空軍基地。

■サイファー(シャーリーズ・セロン)
シャーリーズセロンはいい女優だけれど、このシリーズでの彼女はけっこうペラいキャラだなあと毎度思ってしまう。特に魅力がない。
スターウォーズネタ多すぎない??

■マグダレーン・ショウ(ヘレン・ミレン)
ショウの母親がまさかのカーアクション披露で登場。ババアの爆走運転はアガる。

■ミスターノーバディ(カート・ラッセル)
なにげに3作連続で登場してるけど印象の薄いキャラクター。
とはいえ役者の存在感はケタ違いなので「ハンは実は彼の手配で生き残っていたのだ」っていうトンデモ設定を演者の顔だけで無理矢理押し切られてしまった感あり。

■デッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)
一瞬だったけどサンドバックフルボッコ最高ですわ。次作への期待感はダダ上がりした。

■ブライアン・オコナー
ラストシーンで一応の匂わせあり。
女性の活躍を描くのならば、逆に男性の主夫業を映画で描くのも必要かもしれない。
とはいえ、絵的に地味になるその役を引き受けてくれる俳優がなかなかいないであろう問題を、本作はうまいこと差し込んでいたかなと思う。

彼の物語は『SKY MISSION』で完結したので蛇足と思う観客もいるとは思うけれど、個人的にはまあアリといえばアリ。

【スコア】
★3.0で。
ドムが主人公と再認識させるっていう意味では良かったのかもしれないけれど、2大巨頭の不在でなんかスケールダウンを感じてしまいました。やっぱロック様&ステイサム不足なんよ。

アクションも絵はすごいのかもしれないけれど、物語があまり面白くないので興奮しづらい。
ミアが活躍したとこは好きでした。

ワイスピ本編とまったく関係ないですが、上映前に流れたジュラシックワールド3の予告編がIMAXで観れて最高だった記憶があります。3分くらいあったと思う。


■パンフレット(880円)
いちおう買ったけど、割としょっぱい出来だった。撮影の裏事情みたいな話だけ多少詳しく載ってます。

表紙:★
質感:★★
写真:★★★
インタビュー:★★
解説記事:★★
撮影秘話等:★★★★
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