千年女優

A GHOST STORY ア・ゴースト・ストーリーの千年女優のレビュー・感想・評価

3.5
ミュージシャンとして活動する男性で、幼い頃から引っ越しが多くてその度に旧家にメモを残してきたという妻と暮らす夫。妻の引っ越しの希望を渋々認めた直後に交通事故に遭って亡くなり、幽霊として現世を彷徨う彼が、最愛の妻と意思疎通が叶わぬままその変化を目の当たりにし、問答の末に成仏する様を描いたファンタジードラマです。

長編デビュー作『セインツ -約束の果て-』のカンヌ国際映画祭で注目されてその後は多くのファンタジー作品を手掛けるデヴィッド・ロウリーが妻との口論に触発されて制作した2017年公開の作品で、予算10万ドルの超低予算映画ながらも多くの批評家協会の映画賞にノミネートされるなど絶賛されて、A24によって広く世界に配給されました。

低予算ながらもケイシー・アフレックとルーニー・マーラの演技を繊細に捉えて意志に反してこの世を去った者の「成仏」という幽霊もの共通のテーマをじっくり掘り下げます。残された者の「再生」の面もありながらそちらが少々おざなりな所はありますが、「未練」と「地縛」の相性を活かして主題とジャンルを紐づける機知ある一作です。
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