みつ

三度目の殺人のみつのレビュー・感想・評価

三度目の殺人(2017年製作の映画)
3.6
この作品にミステリー特有のカタルシスを求めてはダメだ。悲しいくらいにもやもやが残る。だが、誰が誰を裁くのか、深く考えさせられる作品。

犯人は誰なのか、どうして殺したのか、そういう推理をしながら鑑賞することはおすすめできない。この映画を観て考えさせられるのは、咲江の言葉に表される「誰に裁くことができるのか」この一言に他ならない。

取材を重ねただけあって法律の矛盾をうまくついている。法律の曖昧さに対する指摘が作品を通して伝わってくる。事務員の女性の「法律ってなんか変ですね」って言葉がまさにそう。
その法律の中でそれを武器に闘う者が真実を知りたくなるほどの嘘の積み重ね。嘘の中に真実が隠れている。嘘とは何か真実とは何なのか、混乱すればするほどに強く考えさせられる。
それに、カナリア、十字架、ピーナッツバター……メタファーの渦に飲み込まれそうにもなる。

重盛の勝利への執着から真実を知りたくなっていく変化、三隅の面会のたびに変わる表情や証言、咲江の一見無垢かつ静かな深い憎しみと心の傷、美津江のずるさ、弁護士たちの誠実さ、検事の正義感と裁判官の事情。
気づくと、考えたって答えはわからないだろうに登場人物たちの感情を推し量ろうとしている自分がいた。
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