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許された子どもたちのjunのレビュー・感想・評価

許された子どもたち(2019年製作の映画)
3.7
出演しているのはほぼ無名の俳優さんたち。若干演技力が気になる瞬間もあるけど主演の加害者少年の目つきが若い頃の柳楽優弥さんを見ているようでした。


男子中学生4人が川辺に同級生の樹(いつき)を呼び出し割り箸で作ったボーガンで遊んでいるとそのうちの1人絆星(キラ)が反抗的な態度をとった樹に向かって矢を放ちました。矢は樹の喉に刺さり大量出血しているにも関わらず4人は樹を放置して逃走。
その夜帰ってこない樹を心配して捜索していた両親によって無惨な姿で発見されーー


少年犯罪にスポットを当てた本作。
一見普通の家庭のように見えた主犯格の少年の母親は一人息子を溺愛。息子の無実をひたすらに信じてやまない。
その背景には小学校の時にいじめられた経験がある。『いじめられる側の気持ちが痛いほどわかる息子がそんなことするはずがない』
そう思いたい親のエゴを徹底的に押し付け本人から詳しく話も聞かず少なくとも3回はあった立ち直るチャンスを逃してしまったことは罪深いように思いました。


また法に裁かれなくても世間が許さないという風潮ができたのは一体いつからなんだろう。加害者の関係者でも被害者遺族でもない、ニュースでしか事件のことを知らない人たちがネットで少年やその家族を袋叩き。家に落書きやネット配信。自分の信じる正義をこれでもかと振り翳す。
承認欲求の表れかただのストレスの捌け口か…胸焼けがした。ネットリンチも立派ないじめ行為でこういう心理の人たちがいる限りどの社会からもいじめはなくならない気がする。




《以下少しネタバレあり》







こういう映画のパターンとして最後は周りに諭され自分を見つめ直し更生の道を歩む…というのがほとんどの中、こちらはどこまでも道を踏み外し続ける。
後半加害者のぐちゃぐちゃの感情が画面から伝わってくる。
綺麗事なしに現実はこっちがほとんどなんだろうなと思わずにいられなかった。
だからこそ、観る意味のある映画になっているとも言える。

ラストは意味深。
もう何の痛みも感じないというような笑顔だった。
お母さん今更後悔してももう遅いよ。
jun

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