アーリー

犬ヶ島のアーリーのレビュー・感想・評価

犬ヶ島(2018年製作の映画)
4.2
2023.10.28

全編ストップモーションアニメ。ウェスにとっては二度目の試み。彼の作風となんと相性がいいことか。

日本が舞台。とはいっても架空の時代の架空のお話。ハリウッド目線の日本が描かれる。生類憐みの令を犬限定にし、そして全くの逆の政策を打ち出した市長。全国の犬はとある島に捨てられ、隔離された。鬼ヶ島ならぬ犬々島。そこに桃太郎よろしく一人の少年が降り立つ。これまた鬼退治とは逆の意思を持って。
 前作「グランドブダペストホテル」では戦争という裏テーマがあったけど、今作では情報統制や独裁といった内容が読み取れる。仮にコロナがペットから伝染する病気やったらどうしてたやろう。コロナウイルスは意図的に作られたもので、ワクチンを売りたい誰かがリーダーやったとしてもそれに気づくのは難しい。少年は自分で現場に乗り込み、真実を知った。ニュースを見て情報収集するのもいいけど、本当に大事なことは行動に移すことなんやなと思わされる。宇宙があるのは知ってるけど、見たことはない。地球が丸いのは知ってるけど、見たことはない。戦争が各地で起きてるのは知ってるけど、見たことはない。ジョージ・オーウェルの「1984年」を思い出す。結局その人が所属している共同体のトップが出した情報しか見えないのならば、真実を知るのは難しい。

本当にこの人の作品のリズム感は面白いし心地いい。特に今作のメインキャラはデフォルメされた犬。表情や言ってることがいちいち惚けてて可愛い。真顔で惚けたことするのはやっぱ面白いなぁ。シュールな笑いに愛くるしさがプラスされてる。

日本が舞台やから小林少年は日本語を喋る。けどこのセリフに英語字幕をつけなかったそう。アメリカが覇権を握る前はイギリスの時代。英語がずっと一番影響のある言語。英語圏の人々が作る作品やハリウッドの映画は、英語を喋っていない時代や人々のお話すらも英語で作ってしまう。それは仕方ないことやと思うけど、確かに違和感はある。ただ字幕をつけるというのはどこの国の人が観ても理解できるようにという配慮があってのこと。たまたま俺は日本語圏の人間やからちゃんと小林少年が言ってることは理解できたけど、もし違ったら残念に思ったやろうな。けど日本語を理解できない言語としているみたいな指摘は的外れやと思う。
 字幕をつけなかったのは翻訳という段階でニュアンスが変わってしまう部分があって、それを避けるため?そんなこだわりがあるのなら、小林少年の声優は日本人を起用して欲しかった。コーユー・ランキンさんが日本生まれ日本育ちの日本語ペラペラやったらごめんなさいやけど。

ストーリーらしいストーリーが描かれるようになってきた。社会的メッセージも込め出したし。前作の成功で影響力が増したのは間違いない。
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