きまぐれ熊

ムーランのきまぐれ熊のレビュー・感想・評価

ムーラン(2020年製作の映画)
4.2
めちゃくちゃ良かった
最近の実写化系ディズニー作品で1番好きかも
なんかオリジナルより評判が悪いっぽいので、オリジナルアニメとの違いを踏まえつつ、どこが良かったのか書いていこう

個人的にはオリジナルの不満点が見事に解消されていて見たいものが見れた感じ

全体としては
オリジナルではごちゃついていたテーマをムーランの自己実現に一本化
余計な展開を削いで、シンプルなストーリーに
その分、キャラクターのディティールを描く事に振り切ってる
コミカルもロマンスもなし!潔い!

また、ムーランが一人で無双するストーリーから、魔女vs魔女という構図に変更したのもムーランが活躍する必然性を持たせている
それと、強すぎる女=魔女(異端)扱いという比喩も自然にハマっている

大きな変更点としては、
・司令官とのロマンスをカット
・代わりにホンフイという理解者を追加
・ムーシューの存在をカットし、ムーランの天賦の才に置き換えた
・ムーランの無双劇から魔女vs魔女の構図へ
・ムーランの身の振り方
あたりかな

司令官は強い指導者であり、規律の象徴のような存在に変更
当然恋愛描写もカット
オリジナルでは成長する主人公の要素もあったけど、その役目は同僚のホンフイに分離
ロマンス部分もホンフイに受け継がれ...ていないのがポイントで、安易に恋愛に流れなかったのが非常に好感が持てる
ホンフイは惚れてるけど友情半分、恋愛半分みたいな
重要なのはホンフイの持つ理解者としての役割で、オリジナルではいない存在だったんだよね
そこがオリジナルではイマイチに感じてた部分だったから非常にいい改変だと思えた

ムーシューの存在のカットは、真剣に観れる物語にするなら、まあまずそこに手を入れるよね
とは言ってもムーシューがいたからこそ軍隊でなんとかやっていけた訳で、ある程度のハンデがないと軍で目立った活躍をするのは非現実的
そこで追加された設定が“気”の設定
言ってしまえば魔法みたいなもんでムーシュー並みのチートには違いない
だけど力のおかげで生まれながらに抑圧されてきたっていう葛藤が追加されてるのがいい
ありのままでいようと思うと周囲の奇異の目と戦う必要がある
つまりこれ魔法じゃなくて個性なんすよ

そんな出自なので、ノーリスクで無双するという物語にはなっていない
特別な力のあるもの同士で対峙する魔女vs魔女の構図に落とし込んでいる
自然にムーランが無双できる舞台を作りつつ、もう一人の魔女シェンニャンとの対比で周囲の理解の重要性を見せてくる

この映画かなりしつこめにPlaceというワードが連発されるんだよね
使い方も様々で、ネガティブ・ポジティブどちらにも使用されている
中でも冒頭、父上がムーランに言うlearn your place(身の程を知れ)が結構強烈
居場所ってのは自分一人では作りようがない、周囲の理解がなければ成り立たないって主張がシェンニャンの顛末に紐付けられてくるので最期は結構悲しかったな〜

一方、ムーランは周囲の理解のおかげでオリジナルとは違った選択をすることが出来た
周囲の慣例に則った、安易なロマンスに流れないラストシーン
そこから流れてくるリフレクションがオリジナルとはまた別のテーマ性を感じさせてくれるので満足感高かった

個人的には傑作だと思います

あー流れで書き忘れたけど、1つ明確な不満点がある
髪をほどいた途端にばっちりメイクになるんだよね
女は顔じゃないって主張のムーランと反してて残念だったな〜
映画としての見栄え上は仕方ないのはわかるけど、そこまでは攻め切れなかったかディズニー
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