阪本嘉一好子

Junction 48(原題)の阪本嘉一好子のレビュー・感想・評価

Junction 48(原題)(2016年製作の映画)
5.0
この映画の好きなところは、1)主人公カリーム(DAMのタマールTAMAR NAFAR)が自分の生き方を見つけた上に、寛大になったこと。2)ヒップホップのメッセージが、この映画の内容とあっていて、良かったと思ったら、タマールが作った曲じゃなかった。この映画のために音楽家が書き下ろしたのだった。

EHREG, GEORGE (BURN IT, GEORGE)
YA REIT (IF ONLY) - Theme Song from "Junction 48" - A Film by Udi Aloni   (コピペして聴いてみて欲しい。)

ここでカリームは『自分はパレスチナとユダヤ壁に反対している歌を歌っていた。でも、自分はガールフレンドとの間にもう一つの壁を作ろうとしている。』と歌っている。ガールフレンドとの壁は男と女の差別の壁。男は女にこうしろああしろと言って、女のやりたいことをさせないという意味だ。そして、パレスチナの代表と言える詩人のMahmound Darwish(マフムード・ダルウィーシュ)を例に挙げ、彼は男が女の肉体賛美を詠んでいるが、逆であってもいいことだ。などと国民的英雄詩人を例に挙げて、一言提言している。

そして、カリームはこの意味にきづいてガールフレンドに電話をかけて、一緒に歌おうと誘う。


ダムが初めてヒップホップをスタートしたイスラエルのテレアビブの近くのパレスチナ人が住むリッド(LYD)が舞台。この映画はタマールの若い時の話だったんじゃないかな。彼は友達も亡くしているしね。

二つばかり気になる言葉があった。
一つはThe Museum of Coexsistanceという言葉であって、知識がないし、どうパレスチナ人の家屋を奪っていたのか知りたいと思ってちょっと調べた。この映画で、1948年、ユダヤ建国のため、(パレスチナの土地にユダヤ人の国を作った)パレスチナ人を追い出すためのいい口実だと判断した。
こういう記事が見つかったので簡単に共有する。あるパレスチナの高級感のある自宅がエルサレムの自治体によって 美術館にされてしまった。そして、2度とパレスチナ人の手に戻らなかった。

これと似た話で、映画だがSalt of This Sea(英題)(2008年製作の映画)Milh Hadha al-Bahr/Salt of This Sea
https://filmarks
.com/movies/89662?mark_id=82868486

この話でもパレスチナ3世のソラヤはパレスチナの土地にあった祖父の家Jaffaヤッファを訪れる。1948年のユダヤ占領によってレバノンに難民として追い出された祖父の預金、家、足跡を探し求めている。この家はとっくにユダヤ人の手に渡っている。彼女の家庭は資金に恵まれていたから、レバノンに出て行けたと思う。

もう一つは『本当のパレスチナ人』という言葉。カリームは『本当のパレスチナ人じゃない』という言葉を使われているが、カリームのような1948年の子孫のグループではなく、ウエストバンクやガザに住んでいるパレスチナ人という意味だと思う。カリームはこういう言い方をされたが、この考えは米国の黒人やマイノリティーのなかで優秀だったり金持ちだったりする人を社会のある部分では特別扱いし、まずしい地域に住む黒人やマイノリティーを同じ民族でも分けて考える考え方ににている。どこかで差をつけたがる社会はどこにでもある。ヘブライ語のコンサート会場で、カリームに対する妬みはともかく『抗議はするな、だまって2級市民として暮らしていろ』という、人種差別があり、この差別が基盤になってしまっているから、この基盤がパレスチナの人々に悪い意味で浸透してしまって、抜け出るという概念を持つことでさえ大変になってくる社会に住んでいる。