父権をかざし高圧的な父、抑圧にただ従うだけの無知な母、そんな両親と同様のでっぷりと太った体を持て余す障害者の兄とともに、窮屈で雑然とした部屋の中で毎日を過ごす主人公のマリヤナ。
クロアチアの小さな田舎町。閉鎖的なコミュニティの息苦しさの中で、時折映し出される海の眩しさに癒される。
家族という拘束から逃れ自由を得ることの困難さは私よりも一つ上の世代の感覚で観ると共感できるのかもしれない。
一歩間違えれば落下しそうな綱渡りの精神状態だが、ギリギリ破滅せずに保っている姿にマリヤナの内なる強さを感じて、無愛想で無口で不器用で危うい彼女なんだけど、でも憎めなくて…思わず力込めて見守ってしまう。
予想外だが良いエンディングだった。
思い通りにいかない世の中でも自らの意志で泳ぎきると覚悟すれば何かが変わるのかもしれない。何も変わらなくても彼女は変わっていく。