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ニーゼと光のアトリエの映画好き交流CINEPARAのレビュー・感想・評価

ニーゼと光のアトリエ(2015年製作の映画)
5.0
【こもけんのレビュー】

2020/08/22 20:39
「わたしの道具はアイスピックじゃない、筆よ」

電撃が走った。シビレタ⚡︎⚡︎

論理的な言語の治癒を狙う科学と
感情的な言語で意思疎通を狙う芸術との衝突。
ニーゼが医者という立場で
これを実行していくのが鳥肌。
男尊女卑の時代なので特に。

芸術とは咲いた表現の花ではなく、
興味のタネから先の探究の根だという。
哲学なんだなと最近認識した。

精神病棟は無意識の世界への扉を開き
入り込める才能の集まりだ。
ひとえに変人になろうとする
芸術家たちの理想の境地にいる。
ただ、文化の影響を受けていないので
彼らのそれは天然物。
筆を取ってから抽象から構造へと変わる絵。
それはまさに印象からキュビズム、
モネらからピカソへと
移っていくさまと似ている、歴史に裏付けされている。

そして、介護者たちも
決して強制して描かせたりはせず、
「筆を持っててくれないか」
「絵具を移してくれないか」
という促し方。
こちらから教えはせず、
聞かれたことにだけ答えあとは自由にする。
彼らの独り言に耳を傾ける、
そこに無意識の世界へのヒントがある。
ただ、論理的な世界で暮らす彼らのストレスは計り知れないだろう。
介護者が患者に暴力を振るう事情も頷ける。
無意識を恐れず向き合い
受け入れる勇敢さ、マジリスペクト。

精神病は先天的なものは少なく
なにかのきっかけから後天的に
病んでしまうことが多いと知った。
自制心のコントロールが
多少利かないのかもしれないけど、
結局そんなものは個人のものさしで
見方は変わるんだから判断基準としては論外。
誰だって大切なものを失ったら
喪失感で自暴自棄になる。

論理的ではない言語を学び直そう。
無意識の世界を探究しよう。