他人とは距離を置いて読書にふけって過ごす寡黙な男子高校生で、病院で拾った本から偶然人気者のクラスメイトである山内咲良が膵臓の病気で余命幾ばくも無いことを知った「僕」。それをきっかけに彼女から積極的なアプローチを受けてあちこちへと連れ回される彼が、秘密を共有することで交流を深めていく様を描いた青春恋愛映画です。
住野よるが投稿サイト「小説家になろう」に投稿して双葉社から出版されると瞬く間に口コミで広がって本屋大賞では二位に選ばれたベストセラーを月川翔の監督で映画化した作品で、原作ものの強みもあって興行収入では35億円を稼ぎ出す大ヒットを記録し、数々の新人賞にノミネートされた浜辺美波と北村匠海の二人の出世作となりました。
古今東西に多くある余命系ラブストーリーですが、極端に受け身な男子主人公に一風変わった女子が近付く村上春樹風のエッセンスで彩りを加えています。スイートに過ぎるお話でその代償に対して「僕」の成長が遅くささやかなように思えますが、浜辺美波のこの瞬間でしか出せない奇跡的なフレッシュネスがそれを補って余りある一作です。
