バカみたいなタイトルからは想像もつかないほどの丁寧な人間ドラマ。アラサーカップルの停滞とすれ違いという普通の話を超丹念に撮っていて感心しきり。「ピンク映画」としての濡れ場がひとつも無く、どれも男と女の自然の営みとして描かれている。セックスシーンに突入しても映画の流れが滞らないピンクって何気に少ない。キャラクターの生活や日常を誠実に表現しようとする真摯な姿勢、それを実現するためのナチュラルな演技と緻密なカメラワーク。全てに隙が無い。「一緒にどこか遠くへ行こう」。薄っぺらいけど切実な台詞が、宙ぶらりんになって最後には美しく回収される。あのラストシーンは、覚悟を決めた男の感動的な行動ともとれるし、現実に追い詰められた末に渋々とった行動ともとれる。綺麗に纏まってるけど、そういう所に何となく意地の悪いアイロニーが潜んでいそうで油断できない。チラッと出てくる電動バイブ男も爪切り男も不穏だし。それはそうとかまどやイカフライ弁当うまそう。
