《彼が耳にしたのは”喪失〟か”希望〟か》
”ファーザー〟では認知症、前回レビュー作”潜水服は蝶の夢を見る〟では全身麻痺の世界を観る者に擬似体験させる斬新な作風だった。この作品では難聴の世界を。
アカデミー賞作品賞にノミネート、話題作ということでずっと気になっていて…
Amazonプライムにて初鑑賞。
メタルバンドのドラマーであるルーベン。彼は突然聴覚を失い、絶望感で心が折れそうに。
ミュージシャンとして再起を図るため、バンド仲間で恋人でもあるルーのため、彼は聴覚障害者グループへの参加を決断する…
視覚、嗅覚などは手術で治ることもあるが、聴覚は一度失うと完全に回復することはないという。健常者にとって聴こえることは普通のことであり、難聴が大きなハンデだと思うのは当然だろう。
聴覚障害者グループのリーダーの言葉にこうある。
”静寂の中でこそ、心の平穏を得られる。その場所は決して我々を見捨てない。難聴はハンデではなく、治すものではないのだ。〟
なんというポジティブ思考だろう…
先ずは現実を受け入れることが大事で、捉え方次第ではそれが喪失にもなり、希望にもなる。
難聴になったことで、感受性が研ぎ澄まされ、人間として成長していくルーベン。ラストでの彼の選択に人間の強さをみることができる、そんな作品です。