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サバイバルファミリーのbutasuのネタバレレビュー・内容・結末

サバイバルファミリー(2017年製作の映画)
3.0

このレビューはネタバレを含みます

リアリティは無いので、ホームコメディとして楽しむべき作品。この映画をきっかけに「もし電気が止まったら」という思考実験をするには良いかも。

常に主人公一家の目線でのみ状況が語られるので、「うちのマンションだけか…?→この辺一帯…?→関東…?→日本…?」と停電の規模が一切わからないのが面白い。電気が無くなると、情報を得る手段が無くなるんだなぁ。あとそんな状況でもとりあえず出社する"the日本人"的描写もリアル。開かない自動ドアを割ってまでも職場に向かうの、やばいだろ。着いたところでPCが使えないと何もやることがないのに。

本当にどうしようもない家族が、農村生活でまともになり、電気のある日常に戻っても幸せそうに暮らしましたとさ、という話。深津絵里演じるお母さんだけがマイペースで健気で、彼女がいることで一家がかろうじてまとまっている感じ。あんな何でもない一家の専業主婦が深津絵里というのも美人すぎて不自然だが、目の保養になるのでこれは必要なキャスティング。彼女が発する「お父さんは元々そういう人でしょ!」の残酷さたるや。

基本的に家族の行動は同意しかねるものばかりだし、それぞれの街や店や人々の様子もありえないし、というか実際に電気が止まったら世界はもっと地獄になるはずなのたが、そんなこともなくのほほんと安心して観られるコメディであり、まぁこれはこれで。状況に対してみんなが呑気なので、観ていて精神的に楽。決断の連続で、結果が失敗ばかり。でも実際、一般人の行動ってそんなもんだし、それが当然だと思う。蒸気機関車の登場はあまりに嘘くさいが、それでも非常に映画的で、とてもカタルシスがある好きなシーン。

説明台詞も少なく、演出は明瞭かつクドさがなくて程よい。後半に進むに連れてリアリティは薄れていくが、序盤は不安感を煽る演出も上手い。音楽を大仰に使ったり、大げさに笑わせや泣かせに走りもせず、サラッとしたトーンを貫いているのにも好感が持てる。群衆が順番に喋る、といったような日本映画の悪い演出部分も結構あったけども。細かいところをスルーして楽しむことができれば、手堅くまとまった良作だと思う。
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