垂直落下式サミング

ドラえもん のび太と銀河超特急の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

3.5
宇宙の機関車。空とぶ大冒険。ドラえもんで松本零士的スペースロマンかと思いきや、「昔は交通手段だったけど、どこでもドアが発明されてからはめっきり観光用なんだよ。」ってのは、すごくインテリジェンスの高いエクスキューズだなあ。
確かに、どこでもドアのお手軽座標移動が発明されたら、交通や物流や果ては貿易から政治まで、既存の社会構造そのものがぶっ壊れるだろうな。
ミステリーツアーは、修学旅行のようなドキドキ。客席に入るやいなや「ベッドだっ!」って喜ぶのび太をみて、実家の布団で寝てた中坊のころベッドへの憧れはすごかったなあと。
のび太は、なぜか列車のなかで西部劇に出てくる悪漢みたいなのにバキュンバキュン撃たれてしまうが、そのハプニングのあと「ガンマン」でも「カウボーイ」でもなく、「セイブゲキをみたんだッ!」って言う。この残念なボキャブラリーが、のび太だなあって感じ。
のび太は射撃はめっちゃ上手いっ!のび太くんが、なにかが得意な様子ってはじめてみたかも。でも、アメリカのように銃社会でもなく、開拓も戦争もない現代においては、まったくもって必要のない才能ってのが、のび太らしくていい。あいつ自衛官にも警察官にもなれないだろうし。
ミステリーツアーでやって来たのは、ロボットによって管理されたテーマパーク。現場の管理者はほんの少しで、後はぜんぶロボットっていう体制で運営される効率的なテーマパークの脆弱性と、そこで起こるロボットの反乱事件を描いていて、それの元ネタはマイケル・クライトンの『ウェストワールド』であろう。そこに、ボディースナッチャーの侵略ものの要素も足されている。
中生代の星では、ヴェロキラプトルの狩りの生態を説明するところとか、ブラキオサウルスのデカさを強調する仰ぎみるショットのほか、足が速くてかわいいオルニトミムスなども出ていて、超ヒット作の『ジュラシックパーク』の影響がみられる。
恐竜たちは、首と尻尾でバランスを取るように立っていて、昔の映画みたいに直立していない。最新の学説を積極的に取り入れているんだけれど、さすがに羽毛のやつはいないし、プテラノドンはバサバサ羽ばたいているエンタメ準拠。
ドラえもん映画のなかでは平凡。大長編では、いつも敵の設定に苦心しているような気がする。いっそみんなが仲良しな世界から動かずに、争いを起こさない方向もアリだと思う。
いちばんの見所は、車掌さん。車掌さんがかわいい。たぶん本作のヒロイン。床に引きずりそうな萌え袖ぶかぶか制服で、前方後円墳のようなフォルムがかわいい。サービスでジュースをもって来てくれるときのニコニコスマイルも、トラブル発生時の困り顔もかわいい。特に声がかわいい。ロボットなのに責任者として頑張ってて、とってもかわいいと思う。一家に一台ぜひどうぞ。