140字プロレス鶴見辰吾ジラ

シュガー・ラッシュ:オンラインの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

4.0
“IN THE LIFE”
~Just Another Life~

皆様、お久しぶりでございます。
しばらくFilmarksに投稿しておりませんでした。
今年最大の喪失と死生観の変化もあり
何やかんやで悶々とした日々を過ごしておりました。

そして訪れた
「シュガー・ラッシュ」の続編。
予告から醸し出されるファン映画臭。
ディズニーだから何でもする!
というネオンサインのような映画と思ってました。
しかしそこに映されたのは
物語の「めでたし、めでたし」の
閉じていく世界を踏み越えた
そして女性解放運動と
そして更年期障害ジジイへの反旗と
そして「IN THE LIFE」だったのです。

1作目の「シュガー・ラッシュ」は“悪役”という存在にも意義があるという閉じた世界で燻る“負け犬”の救済であり、「醜いアヒルの子」を信仰する弱気者たちへのエールでした。お話はプリンセスが王子と出会い「2人は仲良く暮らしました。めでたし、めでたし。」という新たな閉じた世界へ帰っていくエンディングでした。

2作目はネットという壮大で広大な世界の解放を舞台に、ディズニーが贈る「カーチェイス版ララランド」へと昇華されたのです。そしてプリンセスAnother Life論に基づき、そしてあるハリウッド特撮の重要なシーンのオマージュを投入した描いた、喪失という衝撃に打ちひしがれながらも閉じた世界を抜け出す物語に変貌したのです。

正直1作目で、ヒロインのヴァネロペが可愛いとある種のアイドル信仰的な思考停止をしてしまい、かつラルフを自分に重ねた者ほど、2作目の衝撃レベルは大きく、あるビルのてっぺんで繰り広げられるクライマックスまでの悲痛さに目を背けたくなるのかもしれない。しかしながら「ララランド」のクライマックスの平行線が交わる奇跡のような幻想空間のような壮大な救済は得られなくとも、「見えなくなるまで手を振る。」というシーンに感傷と前進を感じてしまいました。

上記に「ララランド」を上げましたが、ディズニー帝国の強大なパワーと財力に彩られる豪華絢爛なルックは素晴らしいです。閉じたゲーム筐体の世界からオンラインへと移行するシーンと、ネット世界のヴィジュアライズされた「Google」「youtube」「amazon」「Twitter」「楽天」「ebay」「天猫」という世界を支配するネットコンテンツとネット検索機能と予測変換のアニミズムにとことんワクワクさせられました。そして徹底したオマージュネタの洪水をファニーにそして上から目線的に皮肉り、そして某ユニバースへの毒っ気を吐いてくるあたり最高ですよ。そこで世界最大級の帝国は、歴代のディズニープリンセスを一堂に会させ昨今のポリティカルコネクトエクスプロイテーションの神髄を見せつけるわけです。プリンセスたちの閉じた世界の系譜から、最近でハネた「Let it go」よろしく女性は王子に魅入られ、守られ、そして「めでたし、めでたし。」の閉じた世界の住人としての任を解かれていくように、近年のディズニープリンセスは攻めの姿勢、アドベンチャー志向へと移り変わっていることがわかります。本作ヒロイン=プリンセスのヴァネロペがお菓子の国のレースゲームから、おそらくオープンワールド要素のある「スローターレース」というRISKYな世界に飛び込んでいきたくなるのを手引きするのが、シャンクという女性ドライバー、演じるのはガル・ガドット、つまりそうです「ワンダーウーマン」です。昨今の実写版「美女と野獣」や「ワンダーウーマン」のような女性解放運動のパワーをディズニー帝国軍はヴァネロペにも与えたことが伺えます。

これに対して男サイドに待ち受けるのは「千と千尋の神隠し」に登場したカオナシに近い戦慄が待っています。いわば「JAZZ IS DEAD」と高らかに宣言されるようにロマンスの世界は業火に包まれ、宮崎駿が理想としたナウシカのようなヒロインは、どこか遠くの世界へと消えていくのだと悟らされ、帝国の権威の前に説教されたような喪失に襲われるハメになります。そこでネット世界の暗部と向き合えるかどうかは「あなたの生きる力次第です。」と癌患者に放たれる、受ける側にとって無責任な突きつけをされるわけです。クライマックスは向き合えるかどうかの力を試されるわけですからダメージが高いことは必須なのですが、それでもほんの少しの繋がりという救済を心に刻んで自分の世界を生きる「JAZZ IS ReLOADEAD」を見守る勇気を試されるわけなのです。

ALONE
僕らはそれぞれの花を抱いて生まれた
巡り合うために

「めでたし、めでたし」の先にある
次なるLIFEに祝福を。