tthk

RAW〜少女のめざめ〜のtthkのレビュー・感想・評価

RAW〜少女のめざめ〜(2016年製作の映画)
4.0
一言で言えば、センセーショナルで、過激な青春映画だと思いました。「少女」が「女性」へと移行する様を、カニバリズムで描写したものです。いくつか気になったポイントがありました。

一つは色彩です。青色の絵の具をぶちまけられたジュスティーヌは、黄色の絵の具をぶちまけられた男と、共に浴室に「緑色になるまで」閉じ込められてしまうシーンがありました。ここに印象派的な色彩の混合と感情の混じり合いが私の中で重なりました。印象派の試みは単に科学的なものではなく、感情の混じり合いも見込んでたのでしょうか。フランス的な色彩感覚が気になりました。

もう一つは馬です。カニバリズム、獣医学部、ベジタリアンというのは相互に関係していると思いますが、映像技術の発展史には「馬が飛んでるのかどうか」という問題を解決した歴史があるのは周知の通りですが、映画の中でその馬に麻酔をかけて学問的対象として解体していく様を描くことになにか意図があるのでしょうか。

個人的な教訓として、欲は強制的に抑えつけてはならず、少しずつ抑制的に出して行く方が倫理的には正しいと思いました。人を食べたいという欲を持つアレックスが、アドリアンを食い殺してしまうのは絶対的悪ではないけれど、倫理的には悪です。倫理的な悪となってしまっては、元も子もないので、少しずつ欲を満たせる「(父の言うように)解決する方法を見出すべき」だと思いました。「抑えつけられた真の欲が突如として爆発的に発現する」という、いかにも精神分析的なテーゼがこの作品の根幹たるところだと思うので、さすが精神分析王国・フランス、と思いました。

パンフレットの中で町山さんが述べているように、人肉食は脱皮、初潮の象徴ですが、その様をあのようにとてもリアリスティックに提示されると、言葉が出ないものですね。がしかし、目を背けたくても背けてはならないのではないかと思いました。
tthk

tthk