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シーモアさんと、大人のための人生入門のooospemのレビュー・感想・評価

4.5
首都圏で生まれ育った自分にとって「地元」の概念は存在せず、原風景なるものがなくて寂しい気持ちになることがある。でもこの映画の出だしからものすごい安心感があって、自分にとってはピアノの音色が唯一のノスタルジアなのかもしれないと感じた。

音楽をやるからには「完璧」を求めたくなるのも、高尚な嗜好と大衆が喜ぶものはまるで違うことも、音楽家を落胆させる。それでも「音楽は我々に完璧を目指す力が備わっていると教えてくれる」。一切の妥協も中途半端な努力も許されない、音楽は自身を写す鏡なのだと。

中途半端でやめてしまった自分を恥じつつ、その精神力が備わっていなかったことを必然とも考える。後天的に精神力を身につけるために、一曲で良いから完璧を目指すか。それが例えば、ビジネスでどうにかやっていくことにつながって上手いこと噛み合えばいいんだけど。

完璧(究極の美)を目指すことと要領良く生きることは両立しない。でも今の私に必要なのは前者なのだろうなあ、と、この映画を観る前からぼんやり知っていたので、やりかけた曲を「完成」させるためにピアノのスクールを申し込んだ。
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