Mikiyoshi1986

ブンミおじさんの森のMikiyoshi1986のレビュー・感想・評価

ブンミおじさんの森(2010年製作の映画)
4.0
7月16日はタイを代表する映画監督アピチャッポン・ウィーラセタクンの47歳のお誕生日。

本作がカンヌ国際映画祭において東南アジア圏で初めてパルムドールに輝いたという偉業も然る事ながら、
アジア独特の超自然主義な要素を大いに盛り込んだ作風は、東洋的な感覚で我々に強いシンパシーを抱かせ、西洋的な感覚では新鮮な驚きを芽生えさせてくれました。

死期の近いブンミおじさんを通して前世と現世、更には来世へと続く生命の連なりを、森羅万象の神秘性と交えて素描した意欲作。

本作を初めて観た時は幽霊や猿人(精霊?)の登場、「ラ・ジュテ」を模したようなヘンテコな未来スライドショー、あのエンディングなど、あまりのチグハグな全貌に困惑した覚えがありますが、
今では咀嚼するほどに味わい深い魅力を醸し出してくれます。

こうした死生観や民間伝承的なルーツは日本とも深く繋がっており、
例えば岩手の地方に伝わる逸話を編纂した柳田國男著「遠野物語」など、神隠しや幽霊や山男等、山の自然に宿る魑魅魍魎との共通点が多く見られる所も。

生きとし生けるものが一つの宇宙で命を絶えず循環させているというカルマめいた感覚は西洋人をも共感させ、
世界最高峰の栄誉であるパルムドールが授与されたことはとても革新的で画期的な意味合いを持つことと感じます。

一筋縄ではいかぬアピチャッポン・ウィーラセタクンの世界をこれからも熱い眼差しで見届けていきたいです。
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