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ウインド・リバーのYYamadaのレビュー・感想・評価

ウインド・リバー(2017年製作の映画)
3.7
~脱「勧善懲悪」の「新西部劇」~
【ネオ・ウェスタンのススメ】
『ウインド・リバー』(2017)

◆本作の舞台
 ワイオミング州 / 現代

〈見処〉
①先住民の少女の死因は?
・『ウインド・リバー』は、2017年に公開されたサスペンス・スリラー。
・本作の舞台は、ワイオミング州ウインド・リバー・インディアン居留地。FWS(合衆国魚類野生生物局)のハンター、コリー(ジェレミー・レナー)は、雪原の中でネイティブ・アメリカンの少女ナタリーの死体を発見。検死の結果、裂傷やレイプ痕があるが、直接の死因は冷気による肺の出血と窒息死であり他殺とは断定されなかった。
・インディアン部族警察署長のベンは、FBIに捜査を依頼するが、派遣されたのは新人捜査官のジェーン(エリザベス・オルセン)のみ。ジェーンは過酷な環境での捜査に難渋し、コリーに捜査への協力を依頼。 捜査を進めて行くと、ナタリーの恋人マットの遺体が森の中で見つかる。
・謎は深まるが、コリー、ジェーンはマットの勤務先である掘削地の警備員たちに目星をつけるが、2人は真実とともにネイティブ・アメリカン社会の闇に直面することになる…(wikipediaより抜粋)。
・本作の主演は『アベンジャーズ』シリーズでも共演を務めるジェレミー・レナーとエリザベス・オルセン。監督は本作が監督デビューとなる脚本家テイラー・シェリダン。本作にて、第70回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞している。
・次第に明らかになる少女は?そしてその背景は?一級のサスペンス作品として堪能したい。

②現代社会も引きずる先住民の深い闇
・本作の脚本はテイラー・シェリダンによる事実を基にしたフィクション。その作品背景は、現代のアメリカ社会に根付く先住民の深い闇が横たわっている。
・本作の舞台、ワイオミング州ウインド・リバー・インディアン居留地は、1868年に認定された、アメリカで7番目に広く、5番目に人口が多い居留地。
・日本の山形県や鹿児島県に匹敵する、この広大な大地には、現在も2,7000人が生活をしているが、居留地に駐在する警察組織は僅か6人のみ。
・不毛の大地と先住民に対する社会格差による貧困が、ドラッグや犯罪の温床を生み、先住民の行方不明者は統計さえされていないという、アメリカ建国以来の深い闇が解消されることなく続いている様が本作では描かれている。

③テイラー・シェリダン脚本、
 「フロンティア3部作」
・本作の脚本は、TVドラマ俳優出身の人気脚本家テイラー・シェリダンによるオリジナル。
・シェリダンが過去に手掛けた『ボーダーライン』(2015)、『最後の追跡』(2016)に
本作を加えた脚本は「フロンティア3部作」と総称され、いずれもアメリカの辺境を舞台に現代社会が抱える問題や現実をあぶりだした「現代の西部劇」として、高い完成度を誇っている。
・特に、アカデミー脚本賞にノミネートされ、日本ではNETFLIX独占配信された『最後の追跡』を未鑑賞の方には、強くお薦めしたい傑作である。

④結び…本作の見処は?
◎: アメリカ西部を旅行された方には経験があるであろう、ネイティブアメリカンの自閉的な感覚がなぜ起こり得るのか理解出来る。現在も社会格差は解消されておらず、閉塞感を感じる作品に仕上がっている。
○: 現代を舞台にしたストーリーであるが、その作品背景や、終盤の激しいガンファイトは、まさに「西部劇」。ジェレミー・レナーは、ホークアイさながらの無双ぶりを発揮。
○: エリザベス・オルセンによる控えめな演技と、そろそろ主演俳優にステップアップして欲しいジョン・バーンサルのブルーカラーぶりが印象的。
▲: 雪に囲まれた不毛な土地に、閉鎖的なキャラクターたち。精神的に落ち着いている時に鑑賞したほうがよい「重い作品」。
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