ドータクン

マンチェスター・バイ・ザ・シーのドータクンのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

誰に対しても無愛想で、ぶっきらぼうで、近寄りがたい主人公リーは
どこに行ってもうまくいかない。嫌われる、殴られる、うまく生きられない。

それでも、愛してくれる家族がいたが、火事による娘の死をきっかけに離散してしまう。

マンチェスターという街は、海と隣り合わせの静かで穏やかな、「故郷」を想起させる街だ。
事実リーにとっても甥っ子パトリックにとっても、この街は故郷だ。
だが、かたや事故で家族を失い、街を後にしたリーと、かたや生まれてからずっとこの町に根を張ってきたパトリックでは、その捉え方が対照的である。

リーにとっては、たとえ甥っ子との距離が縮まっても、元妻との確執が昇華されても、ふとした拍子に思い出の残滓が姿を表すのである。
本作で、現実軸と過去回想の境目がわかりにくく構成されていたのも、彼の視点を表しているように感じる。

「乗り越えられない、辛すぎる」という言葉が、今もまだ、脳裏を反芻している。

この街の海の美しさを思い出してもなお、乗り越えられない。
ドータクン

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