Ryota

ザ・ダーク・ホース(原題)のRyotaのレビュー・感想・評価

4.0
ニュージーランドの先住民・マオリの血を引く中年のおっちゃん(ジェネシス)が、心の病を抱えながらも地元のチェスチームを全国優勝に導く話。バカにされてもダメに思えてもチェスだけは離れられずに、幼い頃からの友人であるヤクザ(ギャング)の息子を体を張って守る彼。実話らしかった。マオリのホストマザーは辛くて見れないというけど、これも容赦無く現実、友達伝えに聞いてもおかしくないような話。晴れの街ギズボーンなのに一貫して灰色の色調が多い映画にも、監督の思いを感じました。

【バックグラウンドすこしメモ】
「『晴れの街』ギズボーン」
この映画の舞台になったニュージーランド北東部のギズボーンは日照時間が多くて、街にも南国らしい木が多い。それなのに、街はちょっと小汚くて、ともすれば危なそう、と言う人もいる。その理由は一つではないけれど、多くの人が言うのは、先住民であるマオリの人口が多いからということ。ギズボーンは全国の中でもマオリの人口が特に多い市で、その割合は半数にのぼる。現役の市長さんも中国の家系やけれど、生まれ育ちがトマト農家で、トマトを買いに来るマオリの人と話してるうちにマオリ語ができるようになっていまは全国唯一、マオリ語が流暢な市長さんだ。話はそれたけどともかく、マオリが多いギズボーンでこの映画が撮られたのはそんな背景もある。

「トラウマを抱える先住民」
1800年初めから続くマオリへの迫害で、トラウマを背負ったマオリは現代にもとても多い。主人公のジェネシスは5歳の頃に精神病棟に入れられたと言っていたけれど、親がドラッグ、アルコールでお金がなくなって、路頭にさまよう子、精神病棟に入れられる子、なんてざらにいて、そりゃあどちらにしても心にダメージは計り知れない。2019年現在になっても、全国の囚人数の51%はマオリで、何人かはそれは「マオリが戦闘民族やから」と言うけれど、多分違くて、世代を超えたトラウマに起因することが多いことが証明されてる。マオリに生まれたからというだけでスティグマを抱えて育ったマオリたちのひとつの発露が精神病棟であり、またひとつの発露がギャングである。そんな絵が描かれてたのも、この映画でした。
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