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ブラック・スワンのhorahukiのレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
4.3
『マザー!』のDVDいつ出るんすかね??
本当は昨日19日に日本公開する予定だったホラー映画なのですが、残念ながら不評だったので公開中止になってしまいました(T ^ T)結構楽しみにしてたんだけどな〜。というわけで憂さ晴らしに同監督の本作を。

あらすじ…
バレリーナの主人公。『白鳥の湖』のプリマを勝ち取ろうと必死に練習に励む日々。白鳥は完璧に演じられるが、黒鳥が全然ダメ。ライバルに役を奪われるのではないかという恐怖の中、狂気へと堕ちていく話。

抑圧と解放。そして唯一無二な「パーフェクト」さを獲得する物語。これ完全にサイコホラーだと思うんですけど、あんまりホラーとして認識されてないような気がする不思議な作品。

バレエは母親の夢でもあり、主人公はバレエを踊るマシーンのように、欲から切り離され、自分というものを抑圧されて生きている。それこそマシーンのように踊ることに関しては完璧だけど、自分の内なるものを表に出す演技が不可欠な黒鳥は苦手。

自分の内なる欲望を解放させていく主人公。それが見てるだけでも痛々しくて苦しくなります。自然に目覚める欲望ではなく、そのストイックさから強引にこじ開けられた欲望。それに悩み抵抗しつつも、溢れ出て決壊していく。ナタリーポートマンがそれまで築き上げたイメージと相反する姿がその痛々しさを加速させます。

バレエでの成功という華やかな目的に向かって突き進んでるはずなのに、見ていて感じるのはそれと正反対なもの。自堕落で退廃的。堕ちているのに成功に向かっているという矛盾。この矛盾のどうしようもなさに心が抉られます。そして、その矛盾すらも成功のためのストイックさに内包されてしまうというバレエ界の恐ろしさ。そしてパーフェクトを求める表現者が到達する狂気。う〜ん…私はこういう世界は絶対に無理!!即辞めちゃうと思います(笑)

後半で描かれるのは取って代わられることの恐怖。誰もがプリマを狙っている。周りは全て敵。自分(リリー)でさえも。そしてベスの存在。それはトップを守り続けたものの末路。それらを全て知り、感じ、悟った主人公の選択があまりにも残酷。そして美しい。光が白色なのも印象的。「パーフェクト」とは何か。その在り方について、これ以上ないほどの圧倒的な余韻を残す傑作です。
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