湯っ子

ジュリエッタの湯っ子のレビュー・感想・評価

ジュリエッタ(2016年製作の映画)
3.8
ジュリエッタという、金髪のかとうかずこみたいな女性。美人でセンスが良くて知的で、表面だけ見れば憧れの対象になるような女性だけど、彼女の半生は「ソレダメ〜!」の連続のように感じた。

彼女は悪いことはしてないし、もちろん悪人じゃない。むしろ、彼女に非がないのに罪悪感を持ったりしてしまう、心優しい人なのだと思う。そんな心情も理解できるからこそ、「ああ、これはやっちゃダメなんだな」って思える、女性の生き方においての教材みたいな映画じゃないだろうか。

ジュリエッタは美人なので、すぐに男が寄ってくる。特に心が弱ってる時には。たぶん、そんな時こそひとりで自分と向き合った方が良いのに恋愛に逃げてしまうから、成長しない。仕事もそこそこでセンスも良い彼女は、特に自分から働きかけることなしに評価されるし愛される。

人が成長する過程には、愛を「受け取る側」から「与える側」にシフトチェンジする段階があると思う。親が老いた時や、子供を持った時などに。
ジュリエッタは、愛を「与える側」になることができないまま、初老を迎えてしまったのだと思う。本人には悪気も自覚もないから、我が身の不幸を嘆くばかり。でも、アルモドバルはそんな彼女を突き放しはしない。彼女に「与える側」になるチャンスを与えて物語は終わる。

まるで、男を見る目のない妙齢の常連さんが飲んだくれているのを、「アンタってしょうがない女ねぇ…」とあきれながら笑って水割りを薄めに作ってくれたりする新宿三丁目のママ(あくまでイメージです)のような、アルモドバルの包容力を感じた。
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