Jeffrey

高速ヴァンパイアのJeffreyのレビュー・感想・評価

高速ヴァンパイア(1982年製作の映画)
2.8
「高速ヴァンパイア」

冒頭、街を疾走する1台の救急車。スポーツカーによる事故、トラックの横転とトマトの散乱、血を吸う車、不審死、殺人車、犠牲者、レーサー、調査。今、冴えない男の周りで起きる陰謀に立ち向う姿が映される…本作はユライ・ヘルツが1981年監督したチェコスロヴァキアのカルト映画としてコアなファンがいる作品で、この度DVDボックスを購入して初鑑賞したが、中々淡々としていて想像していたのとは違った作品だったが、冒頭の絵画は良かった。そもそもチェコ怪奇映画をたくさん撮っていたヘルツが送るニューウェーブホラーの決定版と言ってもいいだろう。なんと主人公はオスカー監督でもあるイジー・メンツェルが務めている。大企業に翻弄される男を巧みに演じきっていた。


さて、物語は救急病院に勤める冴えない外医師マレックと女性運転手のミマ。ある日2人は偶然レーシングカーの事故現場に遭遇する。以来、2人はそれぞれの形で謎の企業フェラット社の陰謀に巻き込まれることになる。レーサーの夢を断ち切れない彼女は、再開したコーチに誘われフェラット社の下で再び運転訓練を始める。一方、マレックは嫉妬心からミマの周囲をかぎまわるうちに、事故を起こしたレーシングカーの秘密に突き当たる。なんとその車は世界進出をもくろむフェラット社が開発した黒の吸血鬼カー"ヴァンパイアーRSR"だったのである。アクセルから血を吸う悪魔のマシーンはドライバーの魂を食い尽して新たな生血を求めてチェコの闇夜を爆音で走り抜けるのである…。

本作は冒頭に、絵の写真が数枚重なって紹介される。不気味な音楽が流れ、1台の救急車が道路を渡るオープニング・ショットで始まる。その中には男女2人がいる。運転手の荒い運転で男性が、その女性に僕を殺す気かと冗談交じりに会話をしている。カットは変わり、レーシングカーが倉庫から飛び立つ場面へと変わる。また救急車の車内の中へと変わる。男の名前はマレック、女の名前はミマである。彼女はバックミラーを見ると後ろから黒いスポーツカーがやってくることに気づく。

急ブレーキをしたトラックがトマトを大量に道路にばらまき、横転する。そしてUターンをしなくてはならないことになる。後ろからどんどん車がきて、クラクション鳴らし大騒ぎになる。救急車は来た道を戻る。そして先程のスポーツカーを見つける。ミマは車から出てその車に向かおうとするがその車は発進して逃げる。急いで彼女も救急車に戻り追いかけ始める。サイレンを鳴らして車と車の間を追い越す。

続いて、救急車の前にやってきたそのスポーツカーから1人の女性が降りてくる。彼女は足が痛いので見て欲しいと言う。まるでペダルが足を吸い込むような感覚があることをマレックに伝える。彼は専門医師に見せないとわからないと言う。ミマはあなたは何をしたか分かっているのと言う。彼女は大げさねと答える。ミマはその車に乗り調べ始める。カメラは2人の女性のクローズアップを撮る。

そこでスポーツカーは退散する。救急車に乗ってその2人も帰ろうとするが、途中で車が横転しているのを発見する。それは先程のスポーツカーであり、乗っていた女性がその場で倒れている。パトカーが来て、違うトラックも来て、新聞記者やマスコミなども大勢その場に集まり始める。彼女は担架に乗せられ救急車で運ばれる。だがそのスポーツ関係者の連中がその女性を取り返そうと奮闘する。

似たような事件がここ最近7件もあったらしく、その事件を徹底的に調べている男がマレックに対して、あの車は人間の足から血を吸っている。そのため死んでしまうんだと情報を与える。最初は信じていなかった彼だが、徐々にその男の話を聞き入れるようになる。やがてその陰謀にはとある会社が関わっていることを聞き出す…と簡単に説明するとこんな感じで、


いゃ〜凄い映画だわ。だけど正直思ってた以上にオカルトっぽい感じの映画ではなかったような気がする。でも主人公の1人である女性が本来ならカーレーサーになるべく目指している夢がコーチとの決裂によって途絶えてしまい、今では冴えない男の隣に座り救急車の運転手をやっていると言う現実はかなりメンタル厳しいだろうなとは感じ取れる。それに途中で科学者がやってきてドラキュラ映画を見せたりして事実を追加させてマレックを誘導する場面も面白い。

それよりも、結局またフェラット社の元で訓練するミマに対して嫉妬心をあらわにする主人公のメガネ男が哀れで仕方がなかった。そもそもこの突拍子もない車が人間の血を吸ってそれを燃料にして走ると言うこの奇想天外なひらめきは面白い。所々に女性に対してエモーションをかけるその男の姿も笑える。そんで1番爆笑するのが、先ほど言及した吸血鬼映画のワンシーンがこのパッケージのDVDの表紙になっていることだ。全く以て内容と関係ないのに、牙を剥き出しにする黒髪の女性のショットは詐欺だろう。普通に騙されるわ、タイトルだってヴァンパイアって付いてるし…。

ともあれほとんどグロテスクな描写もなければ、見せ場もない1本で、単なる80年代B級ホラー映画と言う感じにしか思えなかった。オープニングの映像だけがアート感覚に溢れていてチェコっぽいなぁと思ったが、その他は正直言って微妙である。ユーモアもチェコ映画ながらにかけているし、パッケージだけのインパクトが押し出てしまったような感じだ。
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