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聖の青春のwigglingのレビュー・感想・評価

聖の青春(2016年製作の映画)
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村山聖の出身地ということで、広島ではロングラン上映。おかげで観ることができたんだけど、ホント観逃さなくて良かった。

これ『ピンポン』の将棋版ですよね。
羽生の「深く潜りすぎて怖くなる事がある。聖君とならもっと深く潜れそう」は、『ピンポン』の「お前となら高く飛べそう」にあたるかと。
そして村山の体調が災いしての痛恨の落手に涙した羽生。「もっと深く潜る」願いが叶えられなかった無念さに泣く様は、勝敗を超えた修羅の世界で戦う勝負師の姿そのものだった。

しかし20kgの体重増って、簡単に思うかもしれないけど超大変だよ。成人病になるレベルの太りっぷりだもの。それに醜く太ることは人気若手俳優にとっては大きなリスクでもあるわけで。松山は人気よりも演じることを優先した。
その覚悟と気迫が、聖が言う「対局は殺し合い」と重なることで、作品に凄まじい迫力を吹き込んでるんですね。

松山ケンイチは誰もが認める才能の持ち主だけど、自分が息を飲んだのはむしろ羽生役の東出昌大の方。彼の存在事自体が違和であるこの感じは何なんですかね。
これは『クリーピー』でも感じたことだけど、何故か彼から目が離せないんですよ。理由は彼が持つ奇妙さなんだけど、何処が変なのかがよく分からない。モデル出身の長身と美貌以外の何かがある。

天才棋士同士の戦いであると同時に、天才俳優と得体の知れない謎俳優の戦いの映画でもある。

そして助演もみんな良いんですよ。
みんな村山の先輩なのに将棋では足元にもおよばない。少年時代に神童と呼ばれ棋士の道に入り、大人になってから凡人であることが突きつけられるキツさ。みんなそれを纏っている。

29年の生涯を全速で駆け抜けた村山聖、それに比べ俺は何やってんだ?と思わざるを得ないわけで。観る者もただでは帰さない優れた作品でした。
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