ボブおじさん

ダンケルクのボブおじさんのレビュー・感想・評価

ダンケルク(2017年製作の映画)
4.0
この手の戦争スペクタルは絶対に映画館の大きなスクリーンと音響で観るべしと劇場公開時映画館のかなり前の方の席で観たことを思い出す。

劇場で観た時は、その映像の迫力と緊迫感あふれる編集に魅了され、映画化が難しいと言われた〝ダンケルクの戦い〟を初めてドラマチックに描いた手腕に感服した。

映像化が難しいというのは、ダンケルクが両軍が激しくぶつかり合う戦闘地帯ではなく、英仏の兵士たちを脱出させるための待機場所になっているため映画的なスペクタルを演出しづらいからである。

映画は史実として有名な〝ダイナモ作戦〟を陸海空の複数の視点から描く。ダンケルクに追い詰められた英仏軍は、この戦闘でドイツ軍からの攻勢を防ぎながら軍の輸送船の他に小型艇、駆逐艦、民間船などすべての船を動員して、イギリス本国に向けて40万人の将兵を脱出させる作戦を実行した。

撤退作戦という一見地味に見えるダンケルクの戦いを忠実に基づき描いた作品であるが、そこはさすがノーラン。しっかりと自分色の戦争スペクタルとして作られている。

陸海空それぞれ異なる時間軸(陸は1週間、海は1日、空は1時間)の出来事が一つの物語として同時進行するサスペンスフルな演出は、過去作で時間を自在に操ってきたノーラン監督の面目躍如といったところか😊

救出を待つ兵士(陸)、敵の攻撃を阻む戦闘機(空)、そして救出に向かう民間船(海)。3つの物語がクライマックスに向けて集約していく。

ケネス・ブラナー(陸)、マーク・ライランス(海)、トム・ハーディ(空)というスター俳優が作品に安定感をもたらしているが、主役は実際の兵士たちの年齢に近い若手俳優たち。中でもバリー・コーガンの独特な風貌と卓越した演技力は一度見たら忘れられない😊

撮影は「インターステラー」のホイテ・ヴァン・ホイテマ、音楽は「ダークナイト」のハンス・ジマーとノーラン監督作の常連が務める。

史実を元にした戦争映画だが、ノーラン監督の色合いがはっきりと感じられる映画だった。



〈余談ですが〉
トム・ハーディと共にノーラン作品の常連にして、本年度のアカデミー賞主演男優賞俳優のキリアン・マーフィが本作にも出演していましたが気づきましたか?

マーフィが演じたのは、墜落した戦闘機から民間船に救出されたイギリス空軍の兵士。 PTSDを起こして精神を病み、ほとんど台詞がなく、終始うつむき加減だった為、公開時に観た時は不覚にも全く気づきませんでした😅

今回は意識して観ていた為、その静かな演技の中に、戦争の恐ろしさや、おぞましさが伝わってきました。

バリー・コーガンは、この時はまだ無名でしたが、この作品で注目を浴び、次回作の「聖なる鹿殺し」の不気味な演技で世界中に知られるようになります。