SatoshiFujiwara

フランスの王女のSatoshiFujiwaraのレビュー・感想・評価

フランスの王女(2014年製作の映画)
3.3
新文芸坐シネマテーク。

これは言ってみれば「構造と関係と変容の映画」だと思った。登場人物らの固有の属性やら性格は最重要ではなくて(と言うか「空虚」なんです)、シェイクスピアの戯曲『恋の骨折り損』をベースとした恋愛における遊戯性(ドワイヨンやら遡ればオフュルス的でもある)の中で各人がどう絡んでいくか、ということ自体の中に面白みを見出す類の映画だろう。その意味では恋愛映画ですらなく、これは文字通りの意味でアクション映画なんじゃないか。

…なんてことをぼんやり考えていたら大寺さんの講義でもある意味似たようなことを言っていて、まあ俺の見立てもあながち的外れでもないかな、なんて思ったんだけど、でもあんまり面白くないんですよ(苦笑)、というか面白さが1回観ただけじゃ分からん、と言うべきなのか。大寺さんが取り上げるくらいなんだから多分面白いんだろう。この講義を聞いていろいろ腑に落ちることがあって(ベルイマンの『この女たちのすべてを語らないために』にインスパイアされていると言われてああなるほど、と。基本ベルイマン苦手気味な俺が例外的に好きな作品だし)、もう1度観ると分かって来んのかなと思っても悲しいかな次にいつ観れるか分かりません。

クラシックファンしか分からん指摘を1つ。冒頭、ラジオからシューマンの交響曲第1番が流れる設定でラジオの解説者が楽器編成を読み上げる中「ハープ」と言うんだが、この曲にはハープは使われない。ある程度のファンなら半ば当たり前のように知っていることなんだが、ワザとな気がする(あるいは元情報の何らかの間違い?)。ワザとだとして意図は?
SatoshiFujiwara

SatoshiFujiwara