Monsieurおむすび

ランジュ氏の犯罪のMonsieurおむすびのレビュー・感想・評価

ランジュ氏の犯罪(1936年製作の映画)
3.6
#ランジュ氏の犯罪
国境近くのレストラン兼民泊にやってきた訳あり風の男女。店の客が男の方は殺人の指名手配犯だと気づいたところで女が経緯を語りだす回顧録。

舞台はアパルトマン。出版社、洗濯屋があり、住み込みで働く者もいる。2階には管理人一家が暮らし、中庭はみんなの憩いの場。
男はランジュ、出版社で働きながら冒険小説を書くお人好しの夢想家。
女はヴァランティーヌ、洗濯屋を切り盛りする若女将。
殺されたのはバタラ、出版社の社長。舌先三寸で色と欲を満たすクズ中のクズ。
他にも人物が多数登場するが、テンポよくシナリオも整理されていて分かりやすい。
かくしてランジュによってバタラは殺されてしまうのだけれど、その顛末を通して夢と自由、人間関係の複雑さなどが描かれる多重構造。
真実を語ったヴァランティーヌが最後に放つ「あとは好きにして」も最高。
全体が選択の話でもある。

あとは何よりアパルトマンという舞台の写し方がいい。一階の窓から中庭へのショット、一階外壁から二階へ上昇するショットも立体感がある。
バタラ関連のシークエンスは非常に腹立たしいのだが、人の善性や賑やかなシーンも多く、ルノワールらしい多幸感溢れる印象なのも特筆。
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