ヤマニシ

バジュランギおじさんと、小さな迷子のヤマニシのネタバレレビュー・内容・結末

4.5

このレビューはネタバレを含みます

 いい映画。ほんとにいい映画。ヒューマンドラマの映画に求めるすべてが詰まってる。
 主人公のおじさんは登場シーンこそ派手だが、中身は人より善性は強いがそれでも一般人の範疇を超えない地に足のついたキャラクター。困ってる人を見捨てておけないとかではなく、最初の方はできれば迷子を遠ざけようとしている節もあり、最初から英雄として描かれているわけではないのが個人的には好き。当人の善性も強い信仰心から生まれているものだし、明確な拠り所があり芯のある人間だとわかりやすくて感情移入しやすい。迷子の子も挙動がいちいち可愛くていい。おでこに手をあてて「あちゃー」みたいな動作をするところとか、しゃべらないだけに感情表現が動作に集約されてていっそうかわいらしく感じた。迷子になるのは一回だけではなく作中では幾度となく迷子になり、キャラクターとして一貫してるのもよかった。他にも記者の人とか国境警備隊やパキスタンの警察で見逃してくれた人とか、周囲の応援してくれる人の善性が高くて見ていて気分がいい。
 迷子の子供の親を探すというのがメインのストーリーだが、背景には国家間の対立、そしてそれを乗り越えた親愛がテーマにもなっている。とはいえ、インドとパキスタンの間の対立とか宗教的な違いを正直あんまり知らないので実感としてはわかりづらかった。現地の人間だと相手の国の人間にいい感情を持ってない人も多いのかな。最終的にはまさしく国境を越えた連帯につながるので、その辺の歴史的な経緯をきちんと知って入ればラストシーンは更に感動的だったのかも。(きちんと勉強しておけという話だが。)異文化の理解というのは最近の映画ではわりと見かけるテーマだが、かなり具体的な宗教的な違いや民族的な対立感情にまで言及しており、割と攻めた映画だった気もする。
 ラストシーンで迷子の子がおじさんに呼びかけるために初めて声を出すシーンは、絶対そういうオチになるやんとわかっていても泣いてしまった。やっぱり王道展開が一番なんすよね。おじさんと迷子の子の友情を道中できちんと示して、喋れないことをたびたび強調していたからこその感動だったし、話の作り方がうまいなと思った。
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