140字プロレス鶴見辰吾ジラ

溺れるナイフの140字プロレス鶴見辰吾ジラのレビュー・感想・評価

溺れるナイフ(2016年製作の映画)
3.7
【異世界モノ】

冒頭の田舎へ移る車内のシーンは「千と千尋の神隠し」と殆ど同じで、不気味なまでのロングショットから出逢う2人、象徴的な鳥居、CGみたいで居心地悪い波。ここで思う山戸結希ヤバい…

小松菜奈の雑な演技と菅田将暉の作り物のような金髪が現実と虚構の異世界恋愛モノみたいに映るし、ジャニーズ重岡大毅の現実代表系真っ当な男キャラとの揺れ動きが良い。そしてなんと言っても上白石萌音!「ちはやふる」では広瀬すずゴジラに対しての上白石モスラだったわけだが、的確で適切な所作と表情で見事なインサイドワーク。ラストの方での陰影の入った顔のショットは最高!

戯れる、穢され、現実に引き戻され、それでも異世界側へ戻りたくて…と時に不気味に時に観念的に時に美しい。全力泣き顔で吉幾三なんて代替え不可能な体験を加えてくるあたり忘れ難い。クライマックスは中盤にある重大なじけんの起こる祭りの荒々しい描写と太鼓の打撃音から静寂、現実と夢のシームレスな交差と荒手のセックスシーン的な祭りとのカットバック。そして真相の種明かし。

ラストのラストは不格好な再現MVみたいになるが、前半のクライマックス前に訪れる幸福のシーンの切り取りリベンジ。「ララランド」のラストの一方的なモノに見えた。そもそも「千と千尋の神隠し」オマージュの冒頭から鳥居と異世界的描写と美少年なのだから、彼氏彼女モノよりもヒロインの宗教的な憧れに近い存在との遭遇と信仰モノなのだと思った。