カトキチ

友だちのパパが好きのカトキチのレビュー・感想・評価

友だちのパパが好き(2015年製作の映画)
5.0
そのタイトルから『恋は雨上がりのように』や『天使の恋』みたいな映画を想像してしまうと思うが(そう思ってしまった内のひとり)、構造的にはファムファタールに翻弄されたあげく地獄に堕ちる男を描いたある種のノワール。

ロングショットの長回しというゴダールスタイルで淡々とした日常が続くというスローライフ系の枠組みだが、冒頭で友達が自分の父親を好きになってしまったとカミングアウトしたことにより緊張感が走るドラマにしたのは発明だと思うし、セリフは簡略化され、音楽もあまり鳴らず、なんなら役者のテンションも常に低いというドライでデタッチメントな演出がタイトルとは裏腹に絵空事ではないことを示しているし、後半の展開もノワールよろしく収集つかなくなっていくのだが、ここに前半からひとりジョーカーを入れたことでちゃんとオチがつくように伏線回収しているのもお見事。役者陣も全員好演で特に岸井ゆきのは90年代市川実日子のような雰囲気で今後このポジションを狙える可能性も大。

人間って、というか男ってどうしようもないよねと神の視点から描く感じはコーエン兄弟のようだし、その映像の作りかたと題材から『女と男のいる舗道』と『女は女である』を併せもったようでもある。山内ケンジ監督、恐るべき才能。
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