安堵霊タラコフスキー

ナショナル・シアター・ライヴ 2016「橋からの眺め」の安堵霊タラコフスキーのレビュー・感想・評価

4.5
昔トニー賞受賞しそうってときに近場の映画館で上映しているという情報があり少し無理して鑑賞したけど、演劇の可能性を感じる作品になっていて感動したのを覚えている。

この作品はアーサー・ミラーの結構サスペンスチックな演劇をリメイクしたものだったが、小道具を殆ど排して四角く白い舞台での役者の演技や間とかで表現し切っており、とてもアーサー・ミラーの演劇とは思えない新感覚の演劇世界が構築されていた。(実際オリジナルの脚本読んでもまるでこのバージョンは想像できないくらい別物のようだった)

しかし簡素な舞台でも演技が卓越したものだったこともあり何が行われているか漠然とながらも理解できたし、優れた役者陣が作り出す場の雰囲気だけでしっかり見応えのあるものに仕上がっていたのは本当に凄いと思った。

勿論この作品で役者陣の実力を引き出しつつしっかり制御もして作品世界を見事に構築した演出のイヴォ・ヴァン・ホーヴェ(この作品でトニー賞における監督賞を受賞)も素晴らしいと言わざるを得ないし、この作品を見てから自分もすっかりファンとなってしまったが、この作品で振るった手腕を映像で表現したらどんなものになるか非常に気になるので是非とも隙を見て映画も作ってほしいものだ。

ちなみに演出のイヴォ・ヴァン・ホーヴェ、またもやトニー賞候補になった新作はあのネットワークを現代風にリメイクしたものになっているらしく、youtubeで紹介映像を見ただけでTV画面を使った表現があまりに面白そうだったから、この新作もナショナルシアターライブとかで上映されてほしいと強く望む。