ろ

トランボ ハリウッドに最も嫌われた男のろのレビュー・感想・評価

5.0

一年の終わりぐらい、映画にちなんだ映画をみよう。
12月のプレイリストに「トランボ」を追加して早数年。
BSプレミアムのおかげでようやく観ることができました。

蓋を開けてみるとなるほど、構図はユダヤ人迫害・黒人差別とほとんど同じで迫害する側はただ相手をよく”知らない”から排除しよう攻撃しようとする。
自分が暮らすこの国をよりよくしたい。たとえ民主主義と共産主義、アメリカとソ連が敵対していようと、その気持ちは同じなのにね。

家族や仲間たちとガーデンパーティーを楽しむ、ある晴れた昼下がり。
トランボのもとに召集令状が届く。
「共産主義者の目的は世界征服だ。民主主義をむしばみ、この国の転覆をもくろんでいる。」
非米活動委員会を侮辱した罪で訴えられ収容所送りに。
映画みたいに黒人との間に友情が生まれるわけでもなく、プロパガンダ映画に熱狂する囚人たちを見るとやるせない。
かといって出所すれば安泰かといえばそうでもなくて、隣人からのいやがらせ、職探しに一苦労。
そしてあれほど大切にしていた家族との時間も削るようになってしまい・・・

トランボを解雇しろ、さもなければ俳優たちにストライキさせるぞ、もう映画業界では食っていけないぞと脅されても、「俺は女と金のために仕事しとんねん!どうせ俺の作る映画なんて字が読めねえ奴らが観るんだから新聞でもなんでも書き立てろよ!」
野球バットを振り回し、ガラス窓を何枚も割りながら反ソを追い詰めるジョングッドマンがあまりに楽しそうで涙が出るほど気持ちよかった。

賞を取りたいとか、芸術性の高いものしか俺は作らないとか、そういう野心だったり傲慢なプライドみたいなものじゃなく、ただ自分の好きなものを追い続けたダルトントランボ。
共産主義者だろうがブラックリストに載っていようが僕はあなたの作品がすきだから一緒に仕事をしないかと電話をかけ、家まで訪ねてくるカークダグラスやオットープレミンジャーが頼もしく、ますます映画が好きになった。

映画に投影された生きづらさも生きる喜びも、映画を作った人だけでなく、その映画を観る私たち一人一人の心を映す鏡だと思った。
ろ