小波norisuke

グッドモーニングショーの小波norisukeのレビュー・感想・評価

グッドモーニングショー(2016年製作の映画)
2.8
ワイドショーの司会者という華やかな職業を取り上げてはいるが、サラリーマンの悲哀を描いた話でもある。主人公がテレビ局の人間ではなく、フリーのキャスターであれば、たとえ同じ行動をとったとしても少し意味合いが変わってくる。 

困り果てた表情の中井貴一さんの演技は可笑しく、朝のワイドショーに出演する局アナとは思えない派手な衣装とヘアスタイルの長澤まさみさんは艶やかで美しく、大きな瞳で真っすぐにカメラを見つめてニュースを読む志田未来さんはとても素敵だ。そして、「いとしのエリー」が頭の中で流れてしまう、中井貴一さんと時任三郎さんのツーショットも感慨深い。全体としては、軽い気持ちで楽しめる。

しかしながら、内容は浅薄だ。立て篭もり犯とキャスターとの駆け引きが物語の山場となるはずが、さほど盛り上がらず、テンポも悪い。敢えてのキャスティングなのかもしれないが、犯人を演じた濱田岳さんが、銃を振りかざしても、怖い人には見えず、緊迫感があまりない (ここはやはり風間俊介さんじゃなかろうか)。

「テレビの裏側を知り尽くした監督ならではの作品」という謳い文句なので、視聴率のためなら何でもやります、というテレビ局の姿勢は、もちろんデフォルメされているのであろうが、あながち完全にフィクションとも思えない。だからこそ、テレビ局(ことさらに、この映画を製作した局)って、やっぱり視聴者を見くびっているのだろうなぁという、うすら寒い気持ちが残った。「ナイトクローラー」ぐらいに、番組製作者たちが視聴率に翻弄される狂気を濃厚に描いてしまったらコメディーとして成立しえないだろうが、本作は笑いもリアリティも中途半端であるように思う。

  とはいえ、監督、キャストの舞台挨拶は、主演の中井貴一さんが「欠席」という趣向も面白く、女優さんたちをはじめキャストの皆さんは華々しくて(時任三郎さんの頭髪が真っ白で驚いた!)、貴重な機会を有難く楽しませて頂いた。ので、これでも点数は少し甘めのつもり。
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