強盗目的で少年2人を殺害した男に、死刑執行8日前から密着するドキュメンタリー
悟りを開き、天国への導きを確信する死刑囚、親族を全て失った被害者遺族、120回もの死刑執行に携わった看守…
自身の意見は表明せず、ただ人の営みを克明に映す、ヘルツォークらしい作品
この世には善悪も偽善も偽悪もなく、全ての行いは人の営みであり、と言うヘルツォークの視点がよく顕れているのが面白かった
ヘルツォーク自身は「国家が個人の命を奪ってはならない」と言ってるが、今作は単に死刑制度へのアンチテーゼ的な作品に落とし込んでいない辺りも良かった
最もヘルツォークの視点が分かりやすいのが、ガラス越しにしか会えないはずの夫との子を身籠った妻のパート(人工授精らしいことは仄めかされている)
それまで散々暴力と犯罪の世代を跨いだ連鎖の話をしていたが、ここで生命の循環的な話を持ってくる辺り、ヘルツォークの人間に対する興味が垣間見える