むっしゅたいやき

火葬人のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

火葬人(1968年製作の映画)
4.0
二次大戦、チェコ・スロヴァキアの総括。
チェコ・ヌーヴェルヴァーグ、ユライ・ヘルツ。
火葬場の支配人である主人公の姿を通し、二次大戦に於いてナチスに協力し、ユダヤ人を迫害した自国・自国民をも総括した作品である。

チェコ・ヌーヴェルヴァーグの世代は、ポーランド派と同じく、所謂戦中に産まれ、戦後混乱期にその青春時代を過ごした世代である。
この為、『ウイーンへの馬車』や『大通りの店』等、戦中戦後の民意の変遷をテーマにした作品も多く見受けられる。
本作も冒頭に記した通り、一人の教養人の姿を通し、同国の戦中、恐怖と功名心に煽られた民衆の姿を表した作品と言える。

非常にヌーヴェルヴァーグらしい、多様なショットを擁する作品であるが、社会の変遷と云うよりは、一人の人間の内的世界の変容を表した物語である。
この為、社会派ドラマとしてのみならず、良質なサイコスリラーとしての側面を持つ。
タイトルカットでは、不協和音に併せ、主人公自身の顔の写真を破く演出が為され、戦前の良識人から戦中のサイコパスへの隔絶を示唆させる。

己の中に、確固たる価値観も無く、知識武装して体勢へ阿る事の無常、空虚さを知らしめる作品である。

因みに、ジャケット写真の周囲の目を気にするオジサンと俯いた少女、そして肩に廻した手は、完全に「イケない関係」を想起させる。
少々残念な点である。
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