KenzOasis

アイリッシュマンのKenzOasisのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
3.5
「タイミングチェーン」

マフィアのヒットマンとして暗躍したフランク・シーラン(演:ロバート・デ・ニーロ)の伝記映画。長いからなあ、と置いてしまっていたのだが、先日「キラーズオブザフラワムーン」がハマったので、やはりスコセッシ監督の気合いの入った映画は観ておこうと思い鑑賞。

結論として、やはり観て良かった。3時間半はやっぱり長いのかもしれないけど、この物悲しさは3時間半だからこそ得られるのではとも思ったりする。「あーあ」と、ため息が漏れるラストだった。

一番好きだったのは、後半に「お前だけデトロイトへ行くんだ」とラッセル(演:ジョー・ペシ)に告げられる朝食のシーン。この時のデニーロの眼よ。「ああついにこの時が来てしまった」という悲しみと一緒に、それでもなお忠義に厚い男の覚悟をにじませている。この瞬間のための映画だったと思う。

終始、デニーロの眼が印象的だ。ラッセルにあいさつするシーンの優しさのある眼から、どんどんと厳しい眼に変わっていく。ギラついてばかりなのにジミー(演:アル・パチーノ)と一緒にいるときは当初の優しい眼をしている。それが沈む。可哀想な生涯と言えばいいのか、よくわからない感情にさせられた。

ペギーが見放したタイミング=フランクが神に見放されたタイミング、とも言えそう。贖罪をしようにももう遅過ぎて、性根から人間ではなくなっていて、ただの老いたヒットマンであっただけ。熱心に神父と話していたとしても、こうして伝記映画として語られようとも、結局一番の真偽はわからないのだから贖罪にはなっていないのだろう。

刑務所でラッセルがフランクと食事する時のジョー・ペシの演技も凄まじかったし、ジミーがキレ散らかすアル・パチーノの演技も最高。贅沢としか言いようがない。
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