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アイリッシュマンのkuuのレビュー・感想・評価

アイリッシュマン(2019年製作の映画)
4.0
『アイリッシュマン』
原題 The Irishman.
映倫区分 PG12
製作年 2019年。上映時間 209分。

巨匠マーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロが、『カジノ』以来22年ぶり9度目のタッグを組み、第2次世界大戦後のアメリカ裏社会を生きた無法者たちの人生を、ひとりの殺し屋の目を通して描いた力作。

伝説的マフィアのラッセル・バッファリーノに仕えた実在の殺し屋で、1975年に失踪した全米トラック運転組合委員長ジミー・ホッファをはじめ、多くの殺人事件に関与したとされるフランク・“アイリッシュマン”・シーランをデ・ニーロが演じるほか、ジミー・ホッファ役のアル・パチーノ、ラッセル・バッファリーノ役のジョー・ペシと、ハリウッドのレジェンド級俳優が豪華共演。

芸術に関しては、根本的な区別をしなければならないかな。
一方には芸術作品の品質があり、他方には個人の趣味がある。
我々はこの2つの概念を混同しがちやけど、異なるものとして理解する必要がある。
本や絵画や映画の質は、鑑賞者の嗜好とは無関係であるはず。
小生は通常、駄作が好きなことを進んで認める。
小生自身興味深いことに、素晴らしい映画を好きでないことを受け入れるのが難しい。
今作品は、そんな傾向をすっ飛ばして巧みな映画的傑作だと個人的に思えた。
今作品は、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』や『ゴッドファーザー』とか、他の主要な映画作品から明らかに影響を受けているやろけど、特に終盤では、何か新しく、独創的で異なるものを達成していると思います。
作品は、呼吸し、鼓動する良心を持った映画って云えるかな。
作中、登場人物たちが紹介され、その一人ひとりに待ち受ける陰惨な運命の詳細がスクリーンに貼り出され、彼らの多くは、歩いている死人であることに間違いはない。 
年老いた賢者の回顧的レンズを通して、自分が同時に追体験している行動に、彼らの運命が封印されている。
今作品はメチャクチャ長いです。
最初のカットやと4時間を超えたと噂されてるほどやし、泣く泣く切り刻んだんやろなぁ。
スコセッシの今作品は打ち止め間近の作品やろし(放映予定で原題『Killers of the Flower Moon』てのがあるみたいやけど)
もうそんなに見るのは出来ないし劇場で見たかったけど、あれよあれよと忘れてて、今になり鑑賞。まぁ、劇場やと、膀胱を空っぽにしてから観なきゃヤバい長さなんで、その強迫観念を感じず、実際、アッちゅう間に観終えた感はしてますが、最高でした。
映画『ウルフ・オブ・ウォールストリート』ほどのテンポの良さはなかったが、必要なところではきっちりとテンポがあり、決して遅くなったり、興味を失ったりすることはなかった。
何か怪しい匂いを感じたり、お酒を飲まない人がお酒の比喩をしたりと、この瞬間に特別な意味や緊張感を持たせるために多くの工夫が凝らされているのがわかったかな。
個人的には今作品は、最近見た映画の中で最高に位置する作品の一つであり、映画文化全体に対するエレジーやし、
友情、
家族、
老い、
死、
人間の心理、
人間の基本的な絆の悲劇的な解消、
罪悪感、裏切り、
そして人間関係の分断に関する綿密な研究であることに気づいた。つまり、人間を構成するものすべてについて描いてた。
21世紀のゴッドファーザー
って書いたらゴッドファーザーのファンに叱られるかも知れへんけど。
巧みな演出と、手ごわい脚本と同世代の偉大な俳優たちが集結してました。
各々の俳優がニュアンスと複雑さを表現し、演技の達人として登場人物になりきり、その姿を消してゆく。
今作品には、テーマ、映像技術、シンボルがふんだんに盛り込まれてました。
そのひとつが沈黙。
今作品は時に沈黙によって表現されてました。
これはフランクの娘を特徴づけており、彼女は視線ひとつで真実を伝える。
彼女は時に、必要でないからということで、言葉を発しない。
彼女の力強い沈黙は、すでに無限の感覚を呼び起こし、頭への銃弾よりも致命的です。
機敏なダイアログのおかげで、3時間半は完璧に作り上げられた映像の海の中であっという間に過ぎ去り、壮大なスケールのドラマに没頭することができました。
その長さ自体が、この映画が巧みに扱った『時間の経過』ちゅうテーマの反映でもあんのかな。
映画はフィクションであることをある程度失い、現実とさえ感じたし、時間の経過を感じさせようとする。
ある1時間が、同じようにはかない別の1時間にどのように引き継がれるかを見てほしいかな。
作ったのは小生じゃないけど😊
人生がどのように過ぎていくかを感じさせ、ブファリーノ、シーラン、ホッファの世界に直接入り込ませようとする。
このすべてが、犯罪生活の退廃と結末を物語る見事なエンディングで最高潮に達し、3つの時系列の平面を完璧に絡めて、主人公たちのアーチを深く満足させる結末、バイロンの言葉を借りれば
破滅的完成度の高き残骸
で締めくくられる。
なんちゅう味ある作品なんやっっっ!
kuu

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