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マグニフィセント・セブンのMOCOのレビュー・感想・評価

マグニフィセント・セブン(2016年製作の映画)
4.5
「ツキが回ってきたぜ」(ファラデー)

 最近良作の少ない西部劇の中で、本当に楽しい作品でした。「荒野の7人(七人の侍)」のオマージュと聞いただけでワクワクしていた期待を裏切られることなく観る事が出来ました。テンポも良く、ラストも爽快感がありました。

 クリス・プラットは主役も貰うのですが今一つパッとしないと思っていたのですが、この映画に出てくるクリス・プラットは脇役ですが格好いい役どころです。「荒野の7人」のスティーブ・マックイーンにあたる役なのでしょうが、映画前半は完全にデンゼル・ワシントンを食って、前半の主役です。クリス・プラット史上最高のカッコ良さです。西部劇を嫌いなクリス・プラットファンの方がこのクリス・プラットを見逃すとしたらもったいない事です。

 ローズ・クリークの鉱山の金脈に目をつけたバーソロミュー・ボーグは金を独占するために小飼の保安官と用心棒で周りを固めると、教会に放火し抵抗する住民を見せしめに射殺し、住民を追い出しにかかります。
 夫マシューを見せしめに射殺されたカレンは、テディQと共にボーグを倒す助っ人を探しに町を出ます。

 殺人犯を射殺する委任執行官サム・チザム(デンゼル・ワシントン)が指名手配犯を射殺する現場を見た二人はチザムに町を守って欲しいと話します。
 初めは興味を示さなかったチザムですが、敵がボーグだとわかると依頼を引き受けることにします。
 かってチザムの町もボーグに目をつけられ、ボーグの部下に母が凌辱され、二人の妹が撃ち殺され、チザム自信も吊るし首にされた過去があり、復讐のためチザムはボーグを探し求めていたのです。

 チザムはギャンブラーのファラデー(クリス・プラット)をメンバーに誘うと、南北戦争時の知り合いロビショーと相棒のビリー、手配中の殺人犯バスケス、ネイティブ殺しのジャック、ネイティブのレッド・ハーベストが加わり7人のガンマンがローズ・クリークに乗り込み、ボーグ一味に闘いを挑んでいきます。

 アメリカの映画では、寄せ集めのチームにほぼ必ずと言っても良いくらい一人か二人とんでもない人物が混ざっているのですが、この映画ではイーサン・ホークに銃が打てなくなった腰抜けの役をさせています。私はこの設定が大嫌い、イーサン・ホークにも最初から活躍する格好いい役がほしかった・・・。

「荒野の7人」や「七人の侍」がどちらかと言えば『無償の闘い』だったことに比べ最後に明かされるチザムの私怨が6人を集めた展開はオリジナルとはかけ離れた展開で、やや期待を裏切られた感があります。


『マグニフィセント・セブン』(2016年)の7人は白人だけで構成されておらず『荒野の七人』(1960年)とは大きく違っていて、この半世紀でアメリカの社会が大きく変わって来ていることがうかがい知れるのですが、人種差別の壁が取り払われようとしているのはごくごく最近のこと、時代劇がベースになる場合は史実に方が良いのではないでしょうか?アメリカの暗黒史が映画を通して塗り替えられて伝承されて行くよう気がしてしまいます。

「彼らがなにものであったにせよ、最後にここで勇気と名誉と共に立ち上がり、戦えぬ人々のために戦い、そして命を捧げた。
 彼らのものではない『何か』のために・・・

「彼らは崇高なる男たち」
と、結ぶラストはテーマミュージックと相まって心震えるものがあります。
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