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ロブスターのRiNのレビュー・感想・評価

ロブスター(2015年製作の映画)
4.4
きたきたきた、また妙な映画観ちゃった。こんなに放り出される気持ちになるなんて。

水曜日の小さなシアターはほとんど満席でした。
昨年のカンヌ映画祭では審査員賞を受賞しておりました今作、日本では上映館は少ない様子。去年の審査員といえば、史上最年少のドランが選ばれたりと、なんだかザワつく面々だった記憶。なるほど、一筋縄ではいかない映画を選んだものです。

ある日突然妻から離婚を願い出られる主人公。この世界では、独身は罪であり、とあるホテルの一風変わった婚活パーティーで45日以内にパートナーを見つけられなければ、動物に変えられてしまいます。当然、中年太りでお腹も出て、美男でもない主人公も、そのホテルに送り込まれてしまうわけです。
1日のスケジュールが明確に決められ、ダンスパーティーや各種アクティビティを通じて、なんとかパートナーを見つけようとするも、曲者揃い。その上、「狩り」ではこの制度から逃げ出した独身信奉者を生け捕りにしなくてはなりません。

なんという、極端な完全管理世界。いわゆるディストピアSFと呼ばれるジャンルですが、どこまでもブラックジョークの効きすぎた世界観押しに眩暈がします。押し付けられるその圧力が強く、息をするのもやっとなほどの、ハードな鑑賞体験。
映像や美術やキャストの素晴らしさをあげつらうのはむしろ野暮です、この映画においてそれはもう当然クリアしている大前提、とても高い場所で戸惑いを呼ぶ作品でした。

観終わって、暫くして、この作品の大きな動機は怒りかもしれない、と思いました。何かを決められること、押し付けられること、曖昧さを認めないこと、誰もが、◯◯とはなんぞや!と声高に言い募る世界の煩わしさ。そういうものに、「うるせえ黙れ!!」とただ叫んだところでなしのつぶて、それならと、熟した梨を力づくで口に押し込んでやろうと、思ったんじゃないかなあ。
違うかもしれませんが、それと似たような種類の怒りを持っているからこそ、針を打たれたようにこの映画が心に残りました。

自分でも何を書いてるのかいまいちでしたが、ラストシーンについては「春琴抄」みたいだな、と思いました。だからどうというわけではないのだけど。
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