藤川幸樹

ロブスターの藤川幸樹のネタバレレビュー・内容・結末

ロブスター(2015年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

恋愛を強制される空間(ホテル)では本当の愛は見つからないけれど、恋愛を禁じられた空間(森)では本当の愛(と思しきもの?)が見つかってしまったりする、主人公はたまたまこういうパターンだったけれど、その逆もまた然りで、人間て不条理で天邪鬼で愛らしい生き物ですね〜、といったところか。本当の愛が見つからない人々、という設定が登場人物のその他の感情の欠落(喜ばない/泣かない)を無理のないものにしており、結果"シュール"な演出をごく自然な形で実現していて、結構笑える。そのことが後半の主人公が本当に愛する人のために奔走し感情的に振舞うという展開に効いている、とも思う。ラストシーンについては、主人公が失明した恋人のために自らの目も潰して、愛を獲得しようとする、という場面だと解釈した。突然の暗転による終わり方は、主人公と共に観客もまた視力を失う、ということで、それがお話にどう関係のあることなんだと言われればそれまでだけれど、いい映画体験につきものの余韻を残すには十分なインパクトだった。
ロブスターはほとんど視力を持たない生き物だそうだが、ロブスター、という生き物が選ばれた理由がそのことだけによるのだとすると、視力の無い生き物ならば代替可能ということになってしまうし、主人公の愛の誓いである"目潰し"も作品自体に導かれた行動という気がして、ちょっとのれない。いずれにしろ、何故ロブスターが選ばれたのか私には分からなかったし、全編を通しても"恋人が見つからなければ動物になる"という大事な設定があまり効いていなかったような気はする。
藤川幸樹

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