みなりんすきー

たかが世界の終わりのみなりんすきーのレビュー・感想・評価

たかが世界の終わり(2016年製作の映画)
3.2
『12年の空白のあと 恐れを抱きながらも──僕はあの人たちに再び会おうと決めた』

『人は様々な動機に突き動かされて──自らの意思でそこから去る決断をする』

『あなたのことは何も知らず 人から聞いて想像するだけよ』

『愛されてないと?理解されてないと?
そのとおりよ 理解できない でも愛してる』


■ あらすじ ■
昔田舎の家を出て都会で人気作家となったルイ(ギャスパー・ウリエル)は、12年振りに帰郷する。ルイは自分の死期が迫っており、それを伝える為に帰郷したのだ。
家で彼を出迎えた母のマルティーヌ(ナタリー・バイ)、兄のアントワーヌ(ヴァンサン・カッセル)、妹のシュザンヌ(レア・セドゥ)、兄嫁のカトリーヌ(マリオン・コティヤール)。彼らはそれぞれがルイへの思いを抱えていた。ルイは1人ずつと、そして皆でテーブルを囲みながら会話を交わし言い出すタイミングを探るが…


■ 感想 ■
『たかが世界の終わり』
(『Juste la fin du monde』)

カンヌ国際映画祭でグランプリとエキュメニカル審査員賞獲得、カナダ・スクリーン・アワードには9部門、フランスのセザール賞には6部門ノミネート。

随分前に観てたんだけどレビュー下書きに埋もれてた。
マリオン・コティヤール目当てなのが強かったけど、当時から予告見たりして雰囲気良さそうだったので気になってた作品のひとつ。

各賞受賞しまくっているし結構有名作だし、かなり期待して観てしまった。めちゃめちゃ心にズシンと響くものがありそうな、そんなイメージを勝手に持っていたので。

端的に言うと、めちゃめちゃイライラしました。観ていてフツーにストレスが溜まるレベル。何が原因かって、この家族同士のやり取り。なぜルイが若くして家を出て、それきり12年間一度も帰らなかったかって、全ての原因はそこにあると明白である。そりゃ家も出ますわ。

まずまともな会話が成立しない。唯一まともなのは妹だけ。一番ヤバイのが長男。癇癪持ちってこんなレベルでヤバイの?話せというから話し出したら逆ギレされ、他の人と話してるのに勝手に入ってきてまた勝手にキレてる。で、俺が悪者かよ?とか言い出す。こんな人が身近にいたら、私だったら絶縁するね。全く理解が出来ない。

ただ、色んな人の感想見て分かったんだけど、これって多分「この家族ヤバイな、異常だな」と思うのは結構正常な反応っぽい。嫌悪感抱いて当然というか。逆に、これに共感できる人っていうのは、きっと同じように家庭環境に恵まれずものすごく苦しい思いをしてきた方なんだと思う。だとしたら、見ていてもっと辛いものがあるだろうね。思い出したくない家族との嫌な思い出とかトラウマとか、そういうのが蘇ったりして。ただ、まるで別世界、全く理解出来ないものを延々と見せられるのも相当苦痛だったので、多分誰が見てもそこそこイラつく様なんだとは思います。笑

私だったら程なくして家にバズーカ撃ち込んで去ると思うけど、まぁルイはそうはせず、代わりにある意味とんでもない決断を下すんだよね。あのラストは、ある意味で本当に衝撃的。エンドロール見ながら、マジかよ・・・という言葉しか出てこなかった。でももう、ああするしかなかったんだろうね。もう。あれ以外にやる事がない。彼にとって家族という存在が、その価値が、その意味が、あの瞬間”そう”なったんだろう。ものすごくキツイけど。辛すぎるけど。でも、あの決断しかもうなかったんだと思う。
ラストまでのイライラをとにかく我慢しきれば、最後に「あぁ・・・」という脱力感、そしてある意味での衝撃を受けることが出来るので、忍耐力に自信がある人は是非観てみてほしい。途中で観るの投げ出しがちな人には向いていない。

最初のピックアップした台詞にも載せたけど、この映画の語らんとすることは、まさにこれに尽きます。

『人は様々な動機に突き動かされて──自らの意思でそこから去る決断をする』