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LION ライオン 25年目のただいまのYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈5歳の迷子、31歳で帰宅〉
  ~26年ぶり故郷に帰還 / 2012年
・場所: インド/ガネーシャ・タライ
・人物: サルー・ブライアリー

〈見処〉
①「迷った距離1万キロ、探した時間25年、道案内はGoogle Earth」
・『LION/ライオン 〜25年目のただいま〜』は、2016年製作のオーストラリア・アメリカ・イギリス合作の実話ドラマ映画。
・本作の舞台は、1986年のインド。スラム街で暮らす5歳の少年サルーは、兄と仕事を探しにでかけた先で停車中の回送列車で眠り込んでしまい、遠く離れた大都市カルカッタまで来てしまう。
・迷子になったサルーは、紆余曲折を経て、養子として迎えられたオーストラリアで成人に。25年後、友人のひとりから、Google Earthなら地球上のどこへでも行くことができると教えられたサルーは、おぼろげな記憶を頼りに、実の母や兄が暮らす故郷を探しはじめる…。(eiga.comより抜粋)
・本作は2013年に刊行されたサルー・ブライアリーの回想録『25年目の「ただいま」 5歳で迷子になった僕と家族の物語』を基にした感動ドラマ。青年サルーに残る5つの記憶をもとに「Google Earth」を駆使した故郷捜索が印象的に描かれている。

◆回送列車の乗車期間は「2、3日」
◆列車の運行速度は「時速約22キロ」
◆駅周辺に「大きな給水塔」
◆故郷の裏にあった「岩山」
◆町の名前は「ガネストレイ?」

・本作は、わずか1,200万ドルの低予算で製作も、全世界で1億ドルを超える興行収入を記録。第89回アカデミー賞では作品賞、助演男優賞、助演女優賞、脚色賞、撮影賞、作曲賞の6部門にノミネートされるなど大成功を納めた。

②未だに抱えるインドの闇
・日本では考えられない「26年間の迷子」の背景にあるのが、インド全体で推定50万人にも及ぶストリートチルドレンの存在。本作でも示唆的に描かれていた「人身売買以外」にも臓器売買や買春などの闇を抱えている。
・また、現在も14にも及ぶ公用語が存在する多様性の国インド。1986年においても、5歳の迷子に誰も声をかけない過酷な現実を意識して鑑賞をしてみたい。

③結び…本作の見処は?
○: 主人公サルーによる自らのルーツを辿る旅路。エンドロールまで見逃せない感動ドラマ。
○: インドとオーストラリアによる風景美が印象的。GoogleEarthに呼応するような、上空アングルを多数登場する演出となっている。
○: 幼年期のサルーが、素直でとにかく可愛い。『ニューシネマパラダイス』のトトのようだ。
▲: インドにおけるリアルな現実の描写は、『スラムドッグ$ミリオネア』に遠く及ばず。義弟マントッシュが自傷行為を繰り返す背景描写も弱いのが残念だ。美しいシーンは素晴らしいが、「迷った距離1万キロ、探した時間25年、道案内はGoogle Earth」による感動ドラマに終始してしまっている気がする。
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