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ラ・ラ・ランドのtthkのレビュー・感想・評価

ラ・ラ・ランド(2016年製作の映画)
2.0
観ていて心底腹立たしいと感じました。理由は主に以下の二点です。
一つは、脈絡もない歌(と踊り)の挿入です。まず冒頭部分で各人がカーステレオで音楽を聴いて楽しんでいるわけですが、突如としてジャズが強調され、運転手らが次々と運転を放ったらかして歌い、踊りだします。とても不可解です。ここは映画の掴みの部分だから良しとしても、セバスチャンとミアが一緒に踊り出すシーンはさらに不可解極まりないです。ジャズに情熱を注ぐ、偏屈なセバスチャンが突如として踊り始めます。踊れるような兆候は一切なかったにも関わらずです。そして、天文台のシーンも興醒めです。ジャズと何ら関係もないし、急に空を飛び始めます。訳がわかりません。オーディションでは、何でもいいから話して、と言われ、いきなりおばとの思い出話を歌い始めます。このようにして、いきなり、なんの脈絡もなく歌い、踊り始めるのが本作の特徴の一つです。
もう一つは、ジャズ贔屓の酷さです。監督が歪んだジャズ狂であることは『セッション』わかるのですが、他の音楽を貶す必要はあるのでしょうか。なぜ今の「折衷ジャズ」は劣ったもので、「古き良きジャズ」は優れてるのでしょうか。キースがやっているような音楽は皆が皆、嫌々やっているのでしょうか。優れたジャズとはチャーリー・パーカー、マイルス・デイヴィス、オーネット・コールマンなのでしょうか。カマシ・ワシントン、フライング・ロータス、サンダーキャットは「劣ったジャズ」なのでしょうか。ジャズが好きな人がそのように、他の音楽を貶して、自身の好きな「ジャズ」が最も優れたものである、という態度を取るのであれば、私はジャズを憎みます。
こんなジャズ・ルサンチマン的な態度が露骨に顕示された映画で、ジャズに興味を持たれることが残念で仕方がないと私は思っています。
また、キースがセバスチャンへと投げかけた問いというのはこの映画にも当てはまるのではないかと私は思いました。「革命児というのは伝統に乗りすぎてはならない。お前の観客に若い人はいたのか?老人だけだったろ?」という問いかけです。本作は映画に革命を引き起こすことを意図したものではありませんが、ただの懐古趣味になってないか?という点で有効だと思います。車や衣装にしても気を配っていることはわかるのですが、それが「古き良きジャズ」を良しとするための「道具」となり、「昔のジャズっていいよね。その当時のアメリカの感じもいいよね。」となってしまっているのでないかと私は感じました。若い人にはアンティーク趣味を、そうでない人には懐古的趣味を沸き立たせるものでしかないのではないかと私は思いました。

新しきものが全て良い、というわけではありませんが、このように懐古趣味に満ち満ちたものに私は面白みを感じないので、この点数になりました。
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