華やかな芸能の世界に憧れて数多の夢追い人が集うロサンゼルスに暮らす、女優の卵でオーディションに落ち続け一向に役を勝ち取れないエマと、古き良き時代の音楽が廃れゆく現状に不満を抱くジャズピアニストのセブ。出会うやいなやお互いに夢中になっていくふたりの恋愛模様をミュージカルで綴ったデイミアン・チャゼル監督作品です。
各々に夢を追うことに固着するが故の頑固さと奔放さがあってそれ以外のことを要領よくこなせない男女のエモーショナルな恋愛が、歌い踊るミュージカル演出との相性を活かした「恋愛において存在するのは愛し合うふたりだけ」の世界観で没入度高く演出されていて、デイミアン・チャゼルらしい夢追い人を愛でる温かな視線が際立ちます。
物語としては自意識過多で暴走する二人に置いてけぼりをくってしまうところは無きにしも非ずですが、ミュージカル好きを公言する監督による趣向が凝らされて画面を広く効果的に使ったミュージカル・シーンの数々はいずれも目と耳を奪われる美しさで、文字通り「夢中」の人に乾杯を促しての狂おしいほど溢れる愛で心をも奪う一作です。