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印象派の女流画家ベルト・モリゾの伝記映画だ。
とても興味深く面白かった。
姉エドマと切磋琢磨しながら、サロン入賞を目指して腕を磨いていたベルトは、新進気鋭の画家マネと出会い、様々な影響を受けていく。
マネに請われ絵のモデルを引き受けたベルト。
次第に惹かれ合っていく二人。
しかし、マネは妻子持ちだ。
二人は自制を働かせ、寸止め状態で思いとどまる。
ここは、フランス映画とは思えないプラトニックな表現だ。
二人はなんと、最後までチューさえしないのだ。
これは想像するに、二人の絵画ファンを慮っての演出なのではないだろうか。
マネの作品にはベルト・モリゾをモデルにした物が多数ある。
当時二人の関係が、ゴシップネタとして噂の的になっていたであろう事は想像に難くない。
真相は藪の中だが、二人のファンを幻滅させたくないという配慮があったのであろう。
(知らんけど)
閑話休題
プロイセンとの戦争を挟み、ベルトは実力を上げていく。
旧弊なサロンには落選するが、同じく落選したモネやルノワールやドガらが立ち上げた展覧会に出品し、一躍名を上げるのであった。
めでたしめでたし。
そんな物語である。
印象派誕生の直前を描いた作品だ。
私は少し前に印象派に関する本を読んだ事がある。
マネモネやルノワール、ドガ、セザンヌなど有名な画家に混じって、ある女性画家のエピソードもちょこちょこ紹介されていた。
その時は
「へ~、女の人もおったんや~」
ぐらいの印象で、名前も忘れてしまっていた。
ただ、マネが描いたその女性画家の肖像画は強く印象に残っていたのだ。
濃い眉毛がキリッとしていて、意志の強そうな黒衣の美女であった。
しばし見とれた記憶がある。
そう、それがベルト・モリゾだったのだ。
彼女は結局、マネの弟と結婚する。
この弟がよくできた男で、妻を家庭に閉じ込める事なく、その創作活動を積極的に後押ししていたらしい。
このエピソードから察するに、やはりモリゾとマネは何もなかったのではないだろうか。
ゲスの勘繰りはやめよう、と思った次第である。
さて、芸術の秋だ。
美術館に足を運ぶもよし、自ら筆をとってみるもよし、それぞれの秋をそれぞれの方法で満喫していただきたい。
私は芸術関連には少々うるさい人間だ。
これからも芸術的なレビューを書いていく所存である。
(・・・・)