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バリー・シール/アメリカをはめた男のYYamadaのレビュー・感想・評価

3.7
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈CIA闇エージェントの犯罪行為〉
 ~コカインの大量密輸/ 1988年
・場所: アーカンソー州/ミーア州
・人物: バリー・シール
    (パイロット)

〈見処〉
①資金洗浄しきれない!
 破天荒な伝説的パイロットを描く!
・『バリー・シール/アメリカをはめた男』(原題: American Made)は、2017年製作の犯罪伝記映画。
・舞台は1978年。民間航空会社TWAの敏腕パイロット、バリー・シール(トム・クルーズ)は、CIAエージェントからスカウトを受け、偵察パイロットとして、極秘作戦に参加。
・作戦の過程で、パナマの独裁者ノリエガ将軍や、コロンビアの麻薬王パブロ・エスコバルらと接触。バリーは麻薬の運び屋としても天才的な才能を開花させる。
・エージェントとしてホワイトハウスやCIAの命令に従いながら、同時に違法な麻薬密輸ビジネスでにて、資金洗浄が追い付かないほど荒稼ぎする破天荒なバリー。そんな彼にとんでもない危険が迫っていた…。
・本作はトム・クルーズがパイロットとしてCIAの仕事をしながら、麻薬の運び屋でもあった実在の人物バリー・シールに扮した、実話をもとにしたフィクション。監督は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』(2014)に続き、クルーズとタッグを組むダグ・リーマン。

②絡み合う史実との関連性
本作で描かれる犯罪行為は、結果的に世界的史実に影響を与えている。
・本作では、Netflixの人気ドラマ『 ナルコス/大統領を目指した麻薬王』でも描かれたメデジン・カルテルのパブロ・エスコバルとバリー・シールがコカインの大量密輸を始めるが、これにより、アメリカのドラッグ量通は従来のマリファナやヘロインに代わり、新しい薬物コカインのマーケットが拡大。アメリカの大学では、コカインを試したことのある学生の割合は、1970年から1980年の間に10倍にも増加。
・また、高い中毒性のあるコカインの流行により、南米のゲートシティであるマイアミを中心に貧困や犯罪率が悪化した。
・また、本作では「アメリカの裏庭」とも揶揄される中南米の赤化阻止のため、ニカラグアの反共ゲリラ組織「コントラ」に対するCIAの軍事支援が描かれ、本作終盤では、アメリカは「コントラ」に対する支援資金をイランへの闇武器提供を進めることにも触れている(イラン・コントラ事件)。
・その後のアメリカ・レーガン政権は、イラン経由の軍事支援を諦め、韓国の文鮮明率いる「統一協会」傘下の組織を通じて、ニカラグアの反共活動に暗躍。

本作で描かれるバリー・シールの関わった非合法活動がなければ「コカイン中毒」も「アルカイーダ」も「統一協会の発展」もなかったかもしれない。

③結び…本作の見処は?
本来は重い題材ながら、ダグ・リーマン&トム・クルーズによるコメディ・テイストにより、『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』のような娯楽作品に仕上がっている。

○: ダグ・リーマン監督によるテンポのよい作風が心地好い。全編に渡りグリーンとオレンジが鮮やかな画面質感が当時の映像にとてもマッチしている。
○: 実際のバリーシールに似つかわしくない美男のトム・クルーズながら、笑顔振り撒く演技がとても印象的。
○: レーガン大統領、ブッシュ副大統領、クリントン州知事、独裁者ノリエガ将軍、麻薬王エスコバル…歴史に名を残す人物が多数登場で、興味は尽きない。
▲: コメディにて緊張感は薄い。また、印象的な名場面シーンに乏しく、何度も再鑑賞したいほどの「傑作」には届いていない。
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