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ソムニア 悪夢の少年の消費者のネタバレレビュー・内容・結末

ソムニア 悪夢の少年(2016年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます

妻、ジェシーと夫、マークのホブソン夫妻はかつて幼い1人息子、ショーンを風呂場での溺死事故で失った過去を持つ
その悲しみからジェシーは鬱を患っており再出発の為に、と里親として孤児の少年、コーディを迎え入れる
愛らしくて礼儀正しく賢い彼を可愛がる2人だったがコーディにはある不思議な能力があった
彼が夢で見た物は現実世界にも現れるのだ
最初は彼の好きな美しい蝶達が何匹も家に現れるだけだったがやがて事態はエスカレート
死んだはずのショーンが姿を現し、それをきっかけに夫妻は目の前に現れた存在は彼の夢から出て来た物だと知る
死んだ我が子を忘れられずにいるジェシーはコーディの能力を利用してショーンを幾度も呼び出そうとしていくがやがてその能力は悲劇を引き起こしていく…
というあらすじのダークファンタジーホラー

この手の作品はホラーと銘打っていてもダークファンタジーの枠を越えていない物が多いのでこれもそうかな、と思っていたが予想を裏切ってしっかりとしたホラーな展開や描写とコーディの夢が呼び出してしまう幻影の正体と悲劇を終わらせる過程で判明していく真相もきちんと必然性があって且つ美しく感動的な物で凄く良く出来た作品だった

コーディの悪夢の主体となっているのは彼がキャンカーマンと呼ぶ怪物であり彼の実の母、アンドレアもまたそれに食べられたとコーディ自身は考えていた
しかし事の真相は異なる
アンドレアはシングルマザーとしてコーディと2人で暮らしていたのだが膵臓癌を患ってこの世を去っており、まだ幼過ぎたコーディはCANCER(ガン)をキャンカーと読み間違えていて、成長と共に記憶が薄れた末にキャンカーマンという怪物が彼女を食べたと誤解していったのだった
そうして生まれたキャンカーマンはコーディの母を失った悲しみによって作り出された存在である為にアンドレアの事を調べ上げたジェシーが彼女の残したコーディに作られた布で作られた蝶をキャンカーマンに差し出し抱きしめると姿が消え、そこにコーディ自身が現れる
これは序盤で子供を失った人々の自助会で語られていた夢に出て来る登場人物はその人自身なのだ、という言葉の伏線を回収する物で美しい結末だった

ホラー展開にしても
・コーディの転入した小学校の問題児、テイトが教室でコーディが眠ってしまった事でキャンカーマンに喰らわれ姿を消す
・ジェシーの夫であるマークもまたキャンカーマンに喰らわれてしまう
・ホブソン夫妻の前にコーディの里親であった夫妻の夫であるウィーランもまた妻をキャンカーマンに喰らわれていた
という物なのだがそれら全てがコーディの思い込みをきっかけとして起こった悲劇というのが切なくて良い

自らの夢のせいで人々が傷付けられてしまう事を恐れるコーディがカフェインの錠剤や飲み物を使って眠らない様にする様子も健気で悲哀に溢れていて物語のファンタジーとしての美しさを際立たせていた

1つだけ残念だったのはキャンカーマンの出現する場面の恐怖性がジャンプスケアに依存し過ぎていた事
コーディの夢によって現れたショーンが聞き取れない謎の言葉を連呼し続けているかと思ったら「僕は起きている!」というコーディの言葉に移り変わっていく所などは描写として凄く不気味で良かったのでそういうあくまでジワジワと恐怖を煽る手法で通して欲しかった

だがそれくらいしかダメな点は見当たらず粗もさほど見えない名作だった
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