むっしゅたいやき

海の黄金のむっしゅたいやきのレビュー・感想・評価

海の黄金(1931年製作の映画)
3.8
'1931、ジャン・エプシュタイン。
ブルターニュ半島の漁師達の暮らしとそこを舞台とした物語を描いた連作、『ブルターニュの詩』中の一編である。
原題『L'Or des mers』。
本作はまた、トーキーの普及を目的とし、「シャンソンに映像を付ける」作品(『Mor vran』や『Les Berceaux』にて制作)を発案したシンクロ=シネ社が配給を行っている点が興味深い。
とは言え本作はアフレコで録音され、更に音楽が被せられている。

本作はブルターニュ諸島中、最も貧窮に喘ぐへディック島が舞台となる。
一人の住人が難破船からの漂流物を取得したことから起こる島中挙げての騒動を描いたドキュメンタリー風フィクションである。
周囲の掌返しの対応に諧謔を込めた劇となってはいるが、翻って見ても昨今の我々も同様の対応を行っており、洋の東西、古今を問わず、富に群がる人々に共通する浅ましさが胸に刺さる。

本作も連作中の他と同様、現地の人々を起用し、現地の雰囲気を損なわぬ様に撮影されたものであるが、ヒロインを務める女性の演技が心に残る。
それは海風に揺れる頼りなさげな立ち姿であり、絶望に満ち海浜の砂に塗れる所作であり、眼差しなのであるが、島の風景に溶け込みその叙情性を大幅に助長させる役割を果たしており、"これがエプシュタインの撮りたかったものか"、と納得せられるのである。

尚、本作のレビューとズレるが、連作の中の悲恋の叙情的名作『Chanson d'ar-mor(アル・モールの歌)』、及び掉尾を飾る『Les feux de la mer(海の火)』はFilmarksに登録されていない。
この為、『Poèmes BRETONS』に関してはこれが最後のレビューとなる。
少々心残りなことである。
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