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黄金のアデーレ 名画の帰還のYYamadaのレビュー・感想・評価

4.0
【実話に基づく傑作映画たち】
 ~事実は小説より奇なり

◆ベースとなった史実
〈祖国の戦争責任を問う〉
 ~「オーストリアのモナ・リザ」
 返還請求 / 1998年 - 2006年
・場所: 🇺🇸アメリカ 🇦🇹オーストリア
・人物: マリア・アルトマン

〈本作の粗筋〉 eiga.comより抜粋
・アメリカに住む82歳のマリア・アルトマンがオーストリア政府を相手に裁判を起こした。世界中を驚かせたその裁判は、クリムトが描いたマリアの叔母アデーレの肖像画「黄金のアデーレ」の返還要求だった。
・ナチス統治下のオーストリアで、ナチスによって奪われたその名画には、マリア自身と彼女を取り巻く人々のさまざまな記憶が詰まっていた…。

〈見処〉
①幸せな記憶を封印したウィーンで、
私は<家族>を取り戻す――
・『黄金のアデーレ 名画の帰還』(原題:Woman in Gold)は、2015年に製作された、実話に基づくドラマ映画。監督は「マリリン 7日間の恋」のサイモン・カーティス。
・ オーストリアは果たしてナチスの純然なる被害者なのか…『サウンド・オブ・ミュージック』(1965)でも描かれている「善良なオーストリア国民が、ナチスドイツに一方的に虐げられる構図」と真逆の展開を見せる本作。
・グスタフ・クリムトが描いた世界的名画「黄金のアデーレ」の所在に対し、ナチス併合前夜のオーストリアによる不法奪略行為と問う、実際に起こった裁判と、一枚の絵画に秘められた数奇な物語を、『クィーン』(2006)でアカデミー主演女優賞に輝くヘレン・ミレンが演じている。
・共演はライアン・レイノルズ、ダニエル・ブリュール、ケイティ・ホームズ。

②黄金のアデーレ
・通称「黄金のアデーレ」と呼ばれる油絵「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 I」は、オーストリアの画家グスタフ・クリムト(1862-1918)が、彼のパトロンであった実業家のフェルディナント・ブロッホ=バウアーの妻アデーレをモデルに、約3年をかけ1907年に完成させた世界的名画。
・「オーストリアのモナ・リザ」とも言われる銀箔・金箔を散りばめた138 cm × 138 cmのこの油絵は、ナチス傘下のオーストリアにより奪略され、1945年の 第二次世界大戦終戦後はアデーレの遺言を根拠にオーストリア・ギャラリーに留まり続けた。
・本作で描かれた、2006年のマリア・アルトマンとオーストリア政府間のオーストリア法廷による仲裁裁判により「黄金のアデーレ」は正当な相続人であるアルトマンの所有権を認められると、アルトマンは「90歳の高齢にて適切に絵画を管理することが困難」であることから、元駐オーストリア米国大使で、「ユダヤ人損害賠償世界機構」の一員としてナチスがユダヤ人から収奪した美術品を取り戻す活動をしてきた、エスティ・ローダー社社長(当時)のロナルド・ローダーに売却。
・当時史上最高値の156億円に売却された「黄金のアデーレ」は、ニューヨーク5番街の小さな美術館「ノイエ・ガレリア」に展示され、入館料20ドルにて、数奇な運命を辿ったこの絵画を鑑賞出来る。

③結び…本作の見処は?
◎: 主人公マリア・アルトマンの幼年・成人・晩年の3つの期間を並行して描いた本作は、現在まで続く第二次対戦の負の爪痕を丁寧に描く。ヘレン・ミレンによる晩年期のマリアのラストの回想は『タイタニック』エンディングのように、感情の琴線に触れる素晴らしい演出。
◎: 「ヒューマン・ドラマ」を軸に「サスペンス」「法廷ドラマ」「戦争ドラマ」と様々な映画のエッセンスが凝縮。特に若きアルトマン夫妻がナチスの追跡を振り切り、オーストリアを脱出するシーンの緊迫感は尋常ではない。
▲: 史実では「父の死を看取ってからオーストリアを脱出」しているなど、かなり映画寄りの脚色がなされている。

④本作から得られる「人生の学び」
・自らのアイデンティティーに敬意を
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